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前髪がちゅるる、そんなチャオちゅーるな漢の話。
前髪がちゅるんってなる。
なんか20代後半くらいから前髪がちゅるんってなるようになった。
寒い日や晴れの日は問題ない。
暑くてじめじめしている日、梅雨時期は鬼のようにちゅるんってなる。
チャリ通勤なので職場に到着した瞬間から前髪がちゅるんってなると、ぶっちゃけついた瞬間に帰りたくなる。
朝の朝礼時、
俺「あーもう、俺帰っていい?」
後輩A「えっ、どうしたんすか?具合が悪いんですか?」
後輩B「雨だから低気圧で頭痛とかですか?」
俺「雨で前髪がちゅるんってなったから。」
後輩A「・・・・・。いや、たぶんだめですよ・・・。」
後輩B「・・・怒られますよ。そんな理由で帰ったら・・・。」
俺「・・・・。うむ。そうだな。」
後輩も迷惑であろう。前髪がちゅるんってなる先輩に朝からこんなこと言われながら生きていくのは。
俺はこの病(前髪ちゅるん病)に悩まされていた。
悩み過ぎて、逆にさらに前髪がちゅるんってなっていた。
そして髪を切りに行ったある日のこと・・・
美容師「ストレートパーマとかどうですか?」
俺「あれはシャン!ってまっすぐになるから嫌なのです。いきった高校生みたいになるから。俺は30代なのです。」
美容師「シャン!ってならないパーマもあるんですよ。ナチュラルな感じでまっすぐになるパーマが。」
俺「なんですと!!そのような魔法の技術が!?お願いします!お金はいくらでも払います!ナチュラルにまっすぐを維持できる魔法をかけてください!」
美容師「魔法ではないですが、やってみましょう!」
そして俺は謎の物質を前髪に塗りたくられ、サランラップで保温された。
鏡に映るそれはまるでゴミくずのような姿だったが、夢に満ち溢れた俺にとってはどうってことはなかった。
わくわく!どきどき!
わくわく!どきどき!
わくわく!どきどき!
そしてついに
俺「おおおおっ!ナチュラルまっすぐ!それでいてどこか品がある!」
美容師「気に入っていただけたならよかったです!」
俺はカット代とパーマ代、合わせて7500円を笑顔で払った。
そしてご機嫌よく家へと帰った。
俺「じゃじゃーん!どう!?」
嫁「あらいい感じに切ってもらったね!よかったね!」
俺「だろ?他にも気づかない?」
嫁「・・・・?・・・ん?・・・わかんない。」
俺「ふふふ、実は前髪にストパーをかけたのです!ナチュラルなやつを!気づかなかったでしょ!?すごいでしょ!?」
嫁「・・・・・。ってるよ。」
俺「えっ?何?」
嫁「・・・ってる・・・」
俺「何!?聞こえないよ!」
嫁「ごめん!言いにくいけど、ちゅるってるよ!前髪!」
俺「・・・!?うっ・・・嘘だろ・・・7500円も払ったんだぞ!」
俺は信じられない気持ちで、慌てて洗面所へと向かった。
嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!
そして鏡を見て愕然とした。
ちゅるってる。
っていうか前髪の先端だけちゅるってる。
自体は悪化した。
前髪全体がちゅるるよりも、前髪の先端だけちゅるる方がどうしようもない。
俺「・・・なんで・・そんな・・」
頬に温かいものがこぼれ落ちる・・・
俺は32歳にもなって鏡の前で涙を流した。
俺「シクシク・・・うっ・・・7500円もしたのにぃぃ・・・こんなことならベイビーにおもちゃ買ってあげたり、シクシク・・・洋服買ってあげればよかったぁぁ・・・」
どれくらいの時間が経ったのだろう。
いつの間にかポチャリした嫁が俺の後にいた。
そして俺の肩にそっと手をおき言った。
嫁「タロの助・・・チャオちゅーるだよ。」
俺「シクシク・・ちゃ・・ん?・・・シクシク・・ん?チャオちゅーる?」
嫁「そう!」
俺「???」
嫁「ちゅ~る♪ちゅ~る♪チャオちゅ~る♪」
良くわからんけど嫁が歌い出した。
嫁「ちゅ~る♪ちゅーる♪チャオちゅ~る♪」
たぶん音大卒の嫁がこのタイミングで歌ってるから、このタイミングで歌うのが正しいのだろう。
俺「ちゅ・・・ちゅ・・ちゅ~る♪ちゅ~る♪チャオちゅ~る♪」
嫁「そう!」