尻を拭いた後のティッシュのようにされてしまった先輩たち、そして、その仇うち
あれは俺が専門学校生だったころ・・・
毎年恒例で大運動会があった。
俺の通っていた専門学校は理学療法学科、作業療法学科だけでなく、臨床工学学科、義肢装具学科、そして救急救命学科があった。
各学科に分かれて戦う熱い大会だ。
私の所属する理学療法学科は、ステータス的に言うと、運動:勉強=5:5くらいの感じだ。
ちなみに私の勝手な解釈ではあるが、
作業療法学科は運動:勉強=4:6
臨床工学学科は運動:勉強=2:8
義肢装具学科は運動:勉強=1:9
救急救命学科は運動:勉強=9:1
みたいな感じだ。俺の偏見だ。
理学療法学科の諸先輩方は結構偉そうにしていた。イケイケな感じの人も多かった。後輩に対して偉そうで、なんとなく権力意識があるような感じだった。偉そうな中心人物がおり、それを囲むように幹部ちっくなメンバーがいた。ように感じていた。実際どうだったかは知らん。
ちなみに私の世代は下ネタが大好きなエロいメンバーばかりで、特にそういった感じはなく平和だったけれど、エロ過ぎて鼻くそみたいな感じだった(笑
大運動会では伝説の「しっぽ取りゲーム」というものがある。
これは、ズボンの後ろにハチマキを付けて垂らし、取られたら負け。いっぱいとったら勝ちという原点にして頂点のルールだ。
毎回、この戦いは白熱する。中には血を流し、もがき苦しむもの、慌てふためき、転げまわるもの、泣きわめき神に祈りを捧げる者・・・
そして、この戦いに何よりも命を懸けて挑んでくるのが、運動:勉強=9:1の強者、救急救命学科だ。なぜかこの学科は戦車みたいな体格の者や、プロレスラーですか?と聞きたくなるような者、腹筋洗濯板ですか?と聞きたくなるような者ばかりいる。運動神経抜群で攻撃性の高いメンバーばかりだ。
しっぽ取りゲームは各学年・男女別に全学科一斉に戦いが始まる。
私は理学療法学科のイケイケな先輩たちがどれほどの強さを発揮するか、楽しみであった。きっとあんな筋肉バカに負けることなく、頭脳と身体能力の両方を上手く使い分け、勝つはずだ!と信じた。
そしてついに「しっぽ取りゲーム」が始まる。先輩たちの戦いからだ。
みんなグラウンドの中に集まり、闘志を燃やしている。特に救急救命学科のメンバーは目が血走っている。狩りに出る獣のようだ。
ぴーーーーーーー!
ついに始まった。
砂煙がすごい。それだけすさまじい戦いが繰り広げられているのだ。
目を凝らす。先輩たちはどうなっているのか?
俺は目を疑った。
「ひいいぃぃぃぃぃ!」
「やめてくれぇぇ!!」
「しっぽはぁぁ、しっぽだけは勘弁をおぉぉぉ!」
「いやああぁぁぁぁ!」
いつもあんなにイケイケにしている先輩たちが、まるで生まれたての小鹿のようにプルプルしながら、救急救命学科の戦車のような男たちに襲われていた。
のちに聞いた話だが、理学療法学科は比較的女子も多く、いちゃいちゃしていることが多いから、救急救命学科の戦車男たちは毎回食堂でムカついてたそうだ。その腹いせに鬼のように理学療法学科を狩りまくっていたらしい。
再度ぴーーーーーーと笛が鳴る。
砂煙も落ち着き、グラウンドが見えた。
そこには、
尻を拭いた後のティッシュのようになった先輩たちの屍が無数に倒れていた。
許せない。
いつもエロいことばかり言っている俺と、俺の連れの友達たちが切れた。
仇を打つ。
覚悟はできた。尻を拭いた後のティッシュのようにされてしまった先輩たちの仇をうたないと、この後のBBQを楽しめない。
俺たちは目を閉じた。そして全集中の呼吸を使う。心眼。
笛が鳴る。
砂煙が舞うのを肌で感じる。
ゆっくりと目を開ける。
目の前に敵がいる。なぜか俺の脇腹をバカみたいにつついてくる。それだけでもムカつくのに、なぜかカニのような、反復横跳びのような動きをしながら、脇腹をつついてくる。
プチン・・・・
何かが切れた。
俺と俺の連れである理学療法学科の戦車のような友達は荒れ狂った。
俺は目の前にいるカニみたいなやつを投げ飛ばし、カニの連れどもも投げ飛ばし、ねじ伏せていった。戦車のような友達は、すさまじい勢いでタックルをしまくり、突き飛ばしまくった。
もはや、しっぽは取っていない。どうでもいい。
笛が鳴る。
はあはあはあ・・・肩で息をする。
俺たちの前には無数の敵の屍が倒れている。
仇をうった・・・
ついに終わったんだ・・・
闘いが・・・
倒れているやつらのしっぽの色を見る。
青・・・
青??
義肢装具学科の人たちだった。
ごめん、間違えた。
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