言語探偵T 第7話
感覚問題 (前編)
前置詞に関する質問は多い。
日本人にとってこれほど難しいものなのに、なぜ英語母語話者は苦も無く使いこなせるのだろうか?
1.コアイメージの謎
前置詞は基本的な意味を「コアイメージ」で表すことができる。
中学校の教科書にもそのようなコアイメージが載っている。
でも、コアイメージをおさえても、どう使ったらいいか迷うことが多い。
(『英語独習法』 今井むつみ 著より)
ここで重要なのは、「前置詞に迷う」というのは前置詞を「使う」場合であるということである。
つまり、アウトプットの際に迷うのであって、読んだり聞いたりするインプットの場合は前置詞で困ることはほぼないといえる。
たとえばコーパスを検索すると、「ページに」の英語としてonもatもinも載っている(使用頻度からすると、on pageが最も多く、次にat pageになり、in pageはあまり使われない。)
Further information is provided on page 8.
This is discussed in Chapter 1 at page 31.
This is explicitly noted in page 3 of the rules.
上の3つの文を読んだとき、on pageでもat page でも in pageでも問題なく理解できる。このように、文を理解するインプットの場合には、「前置詞で迷う」ことはない。
しかし、話したり書いたりするアウトプットの場合は「どれでもいい」と言われても困る。
「on, in, atの3つともいい」なら「どう使い分けるの?」と前置詞に迷ってしまう。
実際、ネイティブは「感覚的に」使い分けをしている。
(『ネイティブが教える ほんとうの英語の前置詞の使い方』 デイビッド・セイン 著より)
このようなネイティブの「感覚」は、コアイメージから習得できるのだろうか?
この「ネイティブの感覚」に迫るために、次の「in-after問題」を考えてみよう。(『英語教育』 2012年 2月号 より)
なぜ、in 30 minutes が「30分後」という意味になるのだろうか? afterではダメなのだろうか?