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今週の【ほぼ百字小説】2021年6月28日(月)~7月4日(日)

 【ほぼ百字小説】をツイートしたあとに、こっちにそれについてあれこれ書く、というのをやってます。ツイートするたびに継ぎ足していきます。100円で一週間分読めます。まあ投げ銭でもすると思って100円投げて読んでください。日曜日にその一週間分を朗読して音声ファイルで貼ります。ということで、今週もおつきあいよろしくお願いします。

6月28日(月)

【ほぼ百字小説】(3197) 夜道を歩いていると前方の四つ辻に、昨今の薄っぺらなのとは違う昔ながらの重厚な信号機が現れることがあるが、そういうのはまず間違いなく狸が化けた信号機。若い狸は、ちゃんと薄っぺらな信号機に化けるらしいが。

 狸もの。狐狸が人を化かす、という話が子供の頃から大好きで、子供の頃は、祖母や祖父から狐とか狸に化かされた話を聞くのが大好きでした。近所の誰それが化かされた、とかそんな話をしてくれました。そしてそれは、本当にあった話だったんですね。そういうものとして語ってくれた。ついこの間まで、そんな世界があった。狐や狸に化かされるというのが、昔話ではない世界があった、というのが子供の頃の私にはすごく不思議でおもしろかった。あそこの田んぼのあぜ道で、とか、あのお地蔵さんのところで、とか場所までちゃんとはっきりしているんです。だから私のSFにはよく狐狸が出てきます。自分の中では同じ箱に入ってるんですね。そもそもデビュー作である『昔、火星のあった場所』が、火星で人間と狸が対立している、という話です。そういう状況をSFとして成立させようとした、というのがたぶん書いた動機でした。

 「四つ辻」という言葉を使ったのは、ちょっと狸っぽい世界にしたかったから。その言葉を初めて知ったのはたぶん映画『用心棒』。いいですよね、「四つ辻」。映画の中では四つ辻を挟んで対立してる二つの勢力が箱庭みたいに描かれます。狐繋がりで言うと、片側には鳥居があるから画面に映ったときにすぐにどちらの陣営かわかる。余談でした。

 それとはべつに、これはあれですね、前にも書いた谷脇クリタさんと蜂本みささんと私の三人でやってる『犬と街灯ラジオ』というのがあって、そこで蜂本みささんが言った、最近の信号機が薄っぺらい、という話と、それに続く会話がもとになっています。いつのだったかなはちょっとわかりません。前のときも枇杷の話からいくつか書いたりしてりるし、ほんと『犬と街灯ラジオ』にはお世話になってます。

 こういう狐狸的な世界観のものばかりを集めて『100文字たぬき』にしたいんですけどね、でもまだ『100文字ねこ』を出すあてもないですからね。なかなか道は険しいです。

 これはこないだの『犬と街灯ラジオ』
https://twitcasting.tv/inutogaito/movie/689015591



 では、狸的世界観のものをひとつ。

【ほぼ百字小説】(119) 空が広いところを歩いていて、月が二つあることに気がついた。ではここは火星か、あるいはここを火星と思わせたがっている狐か狸の悪戯か。そんなことをぼんやり考えていると、いつのまにやら月は三つに増えている。

 狸で火星ですね。私的にはSFです。

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