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今週の【ほぼ百字小説】2022年11月14日~11月20日


 今週もやります。ひとつツイートすると、こっちにそれについてあれこれ書いてます。解説というより、それをネタにした雑談だとでも思ってください。

 マイクロノベルと私が勝手に呼んでいるこの形式は、中学生くらいのための小説への入口だったり、しばらく小説から離れてしまっている人の小説へのリハビリだったり、もちろん普通にそんな形式の小説として、他にもまだ誰も気づいてないいろんな可能性があると思うし、このままでは先細っていくだけだとしか思えない小説全体にとってもかなり大事なものだと私は思います。気が向いたらおつきあいください。

 あ、投げ銭は歓迎します。道端で演奏している奴に缶コーヒーとかおごってやるつもりで100円投げていただけると、とてもやる気が出ます。

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11月14日(月)

【ほぼ百字小説】(4171) 娘が弁当を忘れたことに気がついて、届けてやるか、と家を出たが、すでに近所は戦場になっていて、たちまち砲撃で自転車ごと吹き飛ばされて死んでしまったから、また最初から。いつになったらこの戦争は終わるのか。

 文芸ムック『ことばと』vol6に「戦争の夢」という短編を書きました。戦争の夢の話です。戦争というお題で書く前に百文字でいくつか書いてみて、それをメモの代わりにして書く、というやり方をしました。最近、たまにそういうことをやってます。これはその中のひとつ。ひとつ、というか、まあこういう話ですね。この夢自体は本当に見たやつ。弁当を届けたことは何度か本当にあります。

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【ほぼ百字小説】(4172) 八番目の彼がやってきて、だが数えかたによっては七番目とか、極端な人になると一番目だったりするから、何番目かではなく彼にどう向き合うかが肝心だろうが、彼というより一種の波だろうというさらに極端な意見も。

 五番目ならサリーですが、八番目の彼の話。これはまあ「彼」と「波」の言葉遊びみたいなものとして書いたんですが、でも何人も彼が続けてやってきたり、でも彼でもあると同時に波でもなる、という量子論的な世界観だと考えれば、この言葉のまま受け取ってもちょっとおもしろいような気がします。

11月15日(火)

【ほぼ百字小説】(4173) 路地の奥のこの借家に住み始めた頃、物干しの向こうは空き地で東の空によく虹が見えた。今は家が建っているが、夜中に物干しに出るとなぜか空き地だったりする。翌朝には家に戻っているから虹のようなものだろうか。

 物干しもの、そして空き地もの、ですね。今、亀を中心にしてまとめようとしているんですが、猫だと路地率が高くなりますが、亀だとどうしても物干しが舞台になりますね。うちの亀は物干しにいますから。空き地も猫の領域なんですが、裏が空き地だったのは本当。そして今は家が建ってる。虹もよく見えました。そして、家が幻、というのはわりとありそうですが、これはその逆ですね。空き地の幻。まあ虹も幻ですね。夜中に船の甲板に出ると海じゃなくて砂漠になっている、というのは何でしたっけ。そんな話がありましたが、あれはいいですね。何だったかなあ。

【ほぼ百字小説】(4174) いつ戦争が始まってもおかしくない状況だったはずなのに、ここ数日で奇跡が起きてなんとか回避できそうだという。始まったらどさくさに紛れてどうにでもなるだろうと思ってもう殺してしまったのに、神も仏もないな。

 いちおうこれも「ことばと」の短編のために戦争ネタで書いたやつですが、使いませんでした。まあ戦争の夢っぽいんですけどね。そして、あるある、でしょうね。計画を立てるとつい先走ってやってしまったりする。このやり方なら大丈夫、とか思うともう我慢できなくなってしまう。えー、そんなあ、という感じですね。

11月16日(水)

【ほぼ百字小説】(4175) 野良ドローンが電線にとまっている。いつからか群れで行動するようになった。あんなに群れが大きくなったのは、野良ではなかったドローンも次々に加わったからか。最近ではドローンだけでなく雀や烏も加わっている。

 そろそろ現れてもいいと思うんですけどね、野良ドローン。雀がたくさん電線にとまっているのを見て、あれがそうだったら、と思いついて書いた。電線にとまってると充電しているみたいだし。充電さえ自分でできたら野良になることも可能ですね。掃除ロボットはそれに近いことができるから、ドローンも可能かも。

【ほぼ百字小説】(4176) 子供の頃に大笑いした噺で今日も大笑いして、でも新しい工夫や掘り下げや削ぎ落しがあって、同じ噺ではあるが同じ噺ではなく、それだけ年を重ねているからか、と勝手に思う。お互い生き残ろう。長生きも芸のうちだ。

 桂雀三郎独演会に行ってきて思ったこと。「代書屋」とか「商売根問」なんかは子供の頃に何度も聞いて大笑いした噺なんですが、昨日はつくづくこんなことを思いました。落語というのは決まったテキストはないんです。誰それがやった型、というのがあるだけで。だから同じネタでも同じということはない。同じ落語家がやってても同じじゃない。生き物なんですね。長生きも芸のうち、というのは落語家だけじゃなく噺自体にも言えることだと思います。

11月17日(木)

【ほぼ百字小説】(4177) 物干しにいる亀はすっかり冬眠に入って、盥の水の底で目を閉じている。洗濯物を干しているとやたら足もとにまとわりついてくるあの感覚をイメージしつつ洗濯物を干している。なんだか遠い昔のことのような気がする。

 毎年の亀あるあるです。数日前のことをそのまんま。またちょっと暖かい日には這い出してきて甲羅を干したりするんですけどね。亀は不思議だ。

【ほぼ百字小説】(4178) サイレンの音で目が覚めた。また火事か。上着を羽織って表に出ると空が赤い。赤い方に向かって歩く。プラスチックの焼けた臭いが強くなる。角を曲がると炎が見える。やっぱりあそこか。たくさんの人形が逃げてくる。

 夢日記というか、夢スケッチです。全部が全部そうじゃないけど。火事があって、道の向こうから人形がたくさん走ってくるのは本当。夢だけど。なかなか怖いでしょ。怖かった。あ、近所で火事があったのは夢じゃないですけど。

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