解題【ほぼ百字小説】21~30

ということで、続きです。

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 まあせっかくなので、いちおう全部の【ほぼ百字小説】に朗読動画をつけてます。ぜんぶ揃えるのはけっこう時間がかかるので、朗読は随時更新、にしてます。

朗読のこと

 前から小劇場で芝居をやったりしていて、朗読とかもけっこう前からやってます。朗読というとちょっと堅苦しいイメージがあるのですが、そういうものではない、一種の話芸としての朗読、みたいなことをやりたくて、田中啓文氏といっしょに暗闇朗読隊というの朗読ユニットでライブをやってたりします。【ほぼ百字小説】もよく読んでます。短いから、間にサックスとかを吹いてもらって、読んで吹いて読んで吹いて、というコール&レスポンスみたいな感じでやったりします、と書いてもよくわかりませんね。いちど観に来てください。暗闇朗読隊の名前の通り、真っ暗闇にしてやってます。

 だいたい400字詰め原稿用紙1枚をゆっくり朗読すれば1分くらいですから、ちょっとした短編でも30分とか40分になってしまいます。落語でも40分を超えるとけっこうな大ネタですから、普通の小説だと朗読には長すぎるんですね。10枚まで、つまりショートショートくらいの長さのものをいくつか並べたりして、その間に即興演奏とかを入れる、というのが聴く側としても聴きやすいと思うんですが、この【ほぼ百字小説】は、それを極端に短くして、隙間の演奏と同じ長さのものにした、とも言えます。ちょっと長め(といっても20分くらいですが)と、【ほぼ百字小説】を20篇ほど読む、というのもよくやってるライブの組みかた。それで、笑いの要素が多いのかもしれません。演奏なしでひとりでやるときは、間にそれに関係することを喋ったりしてつなげるというのもやってます。これは落語のマクラの方法ですね。そういうところもやっぱり落語の影響は大きいです。いわゆる「作家の自作朗読」ではなくて、自分なりの落語みたいなものにしたい、というのは朗読のライブを始めたときから考えてることです。最近、けっこうな場数を踏んだこともあって、けっこうそれに近づけているのでは、とは思ってるんですが。まあ朗読は、これからも暗闇朗読隊(田中啓文氏とのユニット)とひとりでやるのとを並行して続けていこうと思ってます。心斎橋にある書店 toi books で、定期的(二か月に一回くらい)に朗読会をやってます。

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【ほぼ百字小説】(21) あの地底怪人の正体、これまでは超進化をとげたモグラと考えられていたが、じつはイタチ。土の中ではなく道端の溝の中を歩いて移動して、登場のときだけ別売のドリルを用いて地底からの出現に見せかけていたらしい。

 大阪に住んでるんですが、近所にはけっこうイタチがいます。町中で見かける動物としては、猫と犬に次いでイタチですが、大阪に住むまでは見たことはありませんでした。上方落語の「天王寺参り」にもイタチが出てきますから、昔から大阪の町中にはイタチがいたのでしょう。そんなわけですっかり馴染みのイタチです。溝の中から出てきて道を渡って反対側の溝の中に消えたりします。そのあたりからの連想。「別売」はオモチャあるあるですね。「トイ・ストーリー」でもくすぐりのひとつとして使われていたと思います。「怪人」と言えば仮面ライダーで、そこからのからのオモチャ連想かな。

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【ほぼ百字小説】(22) これって何のスイッチなの、と妻が言って、壁のスイッチをぱちん。途端に、何もなくなってしまった。仕方がないから手探りで壁沿いにスイッチを探して、ぱちん。妻と世界が戻ってきた。あ、壁だけはずっとあったな。

 スイッチもの。なんだかわからないスイッチというのは魅力的です。そして押すというか、ぱちん、としたくなります。私の小説だとけっこう押してしまう。カメリとか、ためらいもなく押してしまいます。これもそうですね。

 このオチというかサゲは、「このスイッチの機能とか真相は」みたいなところにはもっていかずに、すべてが消えたときもなぜか壁だけはあったことに気がつく、というズラしかたで、サゲの分類でいけば「へん」でしょうね。もういちどスイッチをぱちんとしないといけないので、そのためにどうするか。それで壁沿いに手探り、というのは暗闇でスイッチをさがすときの身体の感覚の記憶からで、でもそのためには壁がないといけない。世界が消えたのに手探りできる壁はある、ということで、それをサゲに持ってきた。まあ解説するとそんなところ。

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