いったいラオスにあったものは | ラオス日記
2024.11.6 @ Luang Brapang, Laos
日々の生活に余白ができた。旅を始めてよかったなと思うことのひとつ。洗濯だとか、身の回りの整頓だとか、変わらずにやらなければならないことももちろんあるけれど、家事全般のほとんどをやらなくてよくなったし、友達との予定もないし、とにかく時間がある。その分、勉強したり、映画を見たり、本を読んだり、もちろん余暇に充てる時間も増えたけれど、それでもまだ時間がある。ぼーっとする時間が増えた。カフェに入って、すぐにスマホを開かず、PCを開かず、まずは珈琲を楽しむ余裕ができた。朝目が覚めて、昨日観た映画について少しの間考え、思い出すことも。
ラオスからルアンパバーンへの道中に観たドキュメンタリー映画「ウィル&ハーパー」はあまりにもよかった。友達に限らず、わたしたちはもっと話をするべきだ、と思った。そして友だちに会いたくなって、そうしたら予期せずちょうど心に浮かんでいた友だちが連絡をくれて、久々に電話で長話をした。昔は電話ってなんか苦手だった。顔が見えないのに話すのって不思議な感じがした。でもいつからか電話って結構好きで、テキストのやり取りを何往復かするなら短い時間でいいから、声を聞きたい。話したい。
ルアンパバーンにいる間はなぜか書く気になれず、最終日にしてこの数日間の記憶を辿っている。
これから25時間かけてルアンパバーンからタイのチェンマイまでバスとタクシーで移動する。オンラインで予約した時には15:30に出発と書いてあったのに、いざターミナルに到着すると17:00発と言われたので、こうして書いている。果たして、25時間。大丈夫なのだろうか。不安で胸が一杯だけれど、きっと大丈夫。時間は止まらないからいつか到着できる、はず。
ルアンバパーンは街全体が世界遺産に登録されていて、東南アジア最後の秘境と言われるような美しい街。タイから来ると余計にその自然の豊かさを感じる。2021年にラオス初の高速鉄道「中国ラオス鉄道」が開通したことが観光地として盛り上がった要因のひとつとのこと。中国からは多くの人々が鉄道でやってくる。わたしもヴィエンチャンから鉄道でルアンパバーンへ向かったが、ルアンパバーン駅には駅から市内に送迎するためのバンがおそらく何百台とあった。
新興国と言えど、立派すぎるくらい立派な観光地で、メインストリートはたくさんの中国人と西洋人でぎゅうぎゅうだった。わたしはメインストリートまでは徒歩で30分くらい離れた宿に泊まっていたので、宿から街へ出かけながらその街の様子の変化を強く感じた。ここはローカルエリア、ここは観光客エリアということが一目でわかる。観光地だもの、そりゃそうさ、と思う一方で、この街の本当の姿はどこにあるのか、ということを考えた。この街に暮らす人々が大事にしている場所やものを奪ってはいないか、と考えた。この街は、何よりもこの街に暮らす人々のものであってほしい。と思いながら、所詮わたしも観光客なのだということがなんだか空しくて、それでも夕日はあまりにも美しくて。
ルアンパバーンではラオス料理である「ラープ」というサラダの一種のような料理にハマった。豚肉のミンチ(鶏など選べるところもある)とコリアンダーやミント、レモングラスなどのハーブ、もやしやネギなどの野菜を刻んだものを炒めた料理。レタスなどの葉に包んで食べたり、もち米と一緒に食べたりする。お店によって味が異なっていて、どこもそれぞれお美味しかった。ローカル店では、300円くらい、ちょっと小綺麗なお店でも600円くらいで食べられる。わたしは辛いものがそこまで得意ではないのだけれど、東南アジアで食べているうちに間違いなく強くなってきている気がする。口の中をヒィヒィさせながら、竹籠に蒸されたもち米を口に頬張りよく噛むと、もち米の甘さが口の中にじんわりと広がってとっても美味しかった。
ラオスを代表する観光地、クアンシーの滝にも行った。バイクをレンタルして行こうかと考えたけれど、かなり暑かったのでツアーで行くことにした。バンは100,000キープ/人。加えて入場料が60,000キープだったので、日本円にして1,000円ほどで楽しめてしまう。一昔前までは入場料も20,000キープだったらしいが、値上がりしていた。それでも400円ちょっとなので、安い。滝は光が差してエメラルドグリーンに輝き、とても美しかった。やはり写真で見るよりも実物は素晴らしい。何事も一見に如かずだなとつくづく思う。
それから印象的だったのは、ラオスでは物乞いがほとんどいなかったこと。ラオスで観光名物にもなっている托鉢。仏教国の中でもここまで盛大に行われている場所はどうやらないらしい。このおかげで、ラオスでは物乞いをしている人がいないに等しい状態を保っているらしい。托鉢の体験は観光の目玉にもなっているからきっとそれによってまかなわれている部分もかなり大きくなっているのではないかなと思う。信仰の体験。うーん、不思議。
いったいラオスにあったものは。確かに美しいものがたくさんあったけれど秘境ではなかったし、想像していたような新興国のような姿でもなかった。きっとまだ分からない。でも恐らく、ふとした瞬間にあのもち米の、噛めば噛むほどじんわりと広がる甘い味を思い出し、心落ち着く日があるのだろうと思う。決して美しいわけではないメコン川の広大さを思い出して、安堵する日があるのだと思う。エメラルドグリーンに輝く水面のような、陽は落ちていくものなのだと思い出させてくれるサンセットのような、美しい日々を今日も探している。
それでは「ラオスにいったい何があるというんですか?」をこれから読みます📚