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〘異聞・ケルト5〙英雄への道のり3

【アルスターサイクル5】
 
 

 さて、ここからは、クーフーリンの戦いをいくつか挙げて行きたいと思う。

 特に有名なところで、『クアルンゲの牛捕り』『クーリーの牛争い』などと呼ばれているものがある。

 この事件は、簡単に言うと、クーフーリン属するアルスターと隣国コナハトとの間に起きた7年間にも及ぶ戦争だ。これにより、クーフーリンは寝所まで共にしたと言う親友フェルディア・マク・ダマンとは敵味方になってしまった。フェルディアがコナハトの戦士だったからである。

 で、この戦争の原因は、と言うと、やっぱり現代人が聞くと「んなことで7年も戦争してんじゃねーよ」って感じw

 コナハトにはアイルランド上王エオフの娘でメイヴという女王がおり、父からコナハトの王権を与えられていた。

 彼女は元々はアルスター王コンホヴァルの妻だったが、その後アリルと再婚した。アリルは彼女との結婚によって、コナハト王の座を手に入れたのである。

 このメイヴという女王、奔放で我儘だったが妖艶だったようで、愛人もたくさんいた(おい)。良くも悪くもコナハト王権の象徴であり、何よりクーフーリンの命運に多大な影響を与えている。(しかも、悪い方にwww)

 さて……ってところで、『クアルンゲの牛捕り』に話を戻そう。

 ざっくり言えば、雄牛ドン・クアルンゲを手に入れようと画策するコナハト女王メイヴ、そしてそれに立ち向かう若き英雄クーフーリンを描いた物語、である。

 ざっくり過ぎるので、もうちょい詳しく説明すると、この話はコナハト王アリルと女王メイヴが、軍勢誇示のためにクルアハンに軍を集める描写から始まる。

 事の発端は、ある時、メイヴが夫アリルと互いの財産比べをしたことである。

 ほぼ同じくらいの財産を持っていることが分かったものの、アリルは雄牛フィンヴェナハを所有しており、この一点においてだけはメイヴが夫に劣っていた。このフィンヴェナハと言うのは、極めて精強な雄牛である。

 しかも、ひとつ困ったことがあった。

 フィンヴェナハという牛は、元々メイヴ所有の群れで生まれたにも関わらず、女に所有されることを恥と見做し、自らアリルの元へ移り住んだという面倒くさい曰く付きの牛だったのである。

 そこもまた腹立たしいポイントで困り物ではあるが、そもそもは牛一頭で何を張り合っているんだ、という問題に回帰するよね! と言いたい。

 しかし、とにかく夫のフィンヴェナハと同等に強い牛が欲しくてたまらないメイヴは、クアルンゲ(クーリー)の街でドン・クアルンゲという雄牛を見出した。

 そんでメイヴは、この雄牛の所有者ドーラ・マク・フィアハナと交渉した。もしかしたら『三顧の礼』まで使ったかも知れない。そこまでして、何とか1年間借りる約束を取り付けた。

 『借りるだけでいいのかよ?』と思ったそこの貴方とここの私。もちろん、オチがあります。

 一度は借りる約束を交わしたものの、酔っ払った伝令が、実はメイヴの頭ン中『借りられなかったら強奪するつもりだったもーん!』であったことを暴露してしまう。いやぁ、お酒って(昔から)怖いですね〜。

 当然、取引は決裂。

 メイヴは力づくでドン・クアルンゲを我が物にせんと出立する。何を隠そう、この軍に、元アルスター王であり、現王コンホヴァルの叔父であり、クーフーリンの養い親でもあったフェルグス・マク・ロイ率いるアルスターからの亡命者たちもいた。

 何ていうか……『傾国の美女』ならぬ『傾国の牛』??? 何とも絵にならない字面である。

 現代人からすれば、せいぜい『あのA5ランクの和牛を丸ごとゲットするのは誰か!?』『果たして大間産黒マグロを競り落とすのは!?』レベルの話で、7年も戦争すんなや、おい!

 次回につづく。

 
 

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〖参考文献/出典/引用〗
※昔の資料を引っ張り出すことが出来ず比較的新しめの資料群

◉井村君江 著: ちくま文庫
『ケルトの神話―女神と英雄と妖精と』
◉池上良太 著: 新紀元社
『図解 ケルト神話』

〖その他〗
◉遥か昔々に読んだタイトルも作者名も覚えていない数々の本やマンガの記憶のカケラたちと妄想像の山www
 
 
 
 
 
 

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