ケルト_Irish

〘異聞・ケルト2〙騎士となりし猛犬

〖アルスターサイクル2〗
 
 
 

 クーフーリン──『クランの猛犬』と呼ばれるようになったセタンタだが、未だ『騎士』とはなっていなかった。

 彼が青年となったある時のこと。
(※7歳で『少年』は間違いではないが、このレベルの換算で言うと『青年』と言うのは14~15歳からなのだろうか。それとも12~13歳からのことなのだろうか……💧)

『今日、騎士になる者はエリン(アイルランドの古称)に長く伝えられる英雄と成る。ただし、その生涯は短いであろう』

 ドルイド(ケルト社会における祭司)であるカスバドが、そう予言したことを知ったクーフーリンは、さっそく王の元へ向かった。

「そなたは若く、まだ騎士になるには早い」

 許可を渋る王の眼前で、クーフーリンは槍をへし折り、剣をへし曲げ、チャリオットを踏み壊して自身の力を見せつけた。これには王も認めざるを得ず、仕方なくクーフーリンの力に耐え得る武器とチャリオットを与えた。

 こうして、クーフーリンは正式な騎士となった。

 ところで、何度も何度も何度も言うが、彼は大変大変大変見た目が良かった、そうな。

 街中、国中の女たちのあこがれの的だった訳だが、まだ妻を娶っていなかった(だから一体、青年って何歳やねん……)。そのため、街中、国中の男たちは、自分たちの妻や娘が奪われはしないかと心配で、おちおち夜も眠れない。

 それなら、と。

 人々は彼の相手を見つけて結婚させてしまおうと、王であるコンホヴァル・マク・ネサ(コナハ王)に相談した。コンホヴァルは、クーフーリンにふさわしい女性をアイルランド中探し回ったが、結果的に見つけることは出来なかった。

 さて、そのころクーフーリンは、と言うと。

 何のことはない、ある女性と恋に落ち、逢引に出かけていた。

 エメルと言う名のこの女性、クーフーリンと同い年で、血筋や6つの才能に恵まれていたと言う。

1.美貌
2.美しい声
3.甘美な話術
4.針仕事の才
5.知恵
6.貞節

 ……美貌や貞節を才能に入れて良いものなのか既にわからないのだが、それはさて置き、彼女と交流するうちに、自分にふさわしい妻は他にいないとクーフーリンは考え、求婚した。ただ、既に二人は互いに恋に落ちていたのだが、エメルの父フォルガルは婚姻を許可しなかった。

 何故か。

 まず、エメルの姉フィアルがまだ結婚していなかったこと、そして、結婚するにはクーフーリンが騎士として未熟で、武術の修練が足りないことを挙げた。

 これ以上、強くなってどうするんだ、と言うこともさて置いて、フォルガルはクーフーリンにアルヴァ(スコットランド)のドウナルのところで修行するように言い渡した。

 そうやってクーフーリンを遠ざけたところで、フォルガルはエメルを他の男と結婚させようと画策していたのだ。その相手はテウィル(タラ)王ルギド。

 だがしかし、エメルのクーフーリンへの想いもさることながら、ルギド自身のクーフーリンに対する恐れも半端なかった。

「エメルに手を出したらクーフーリンに殺されるぅ!!!」

 とガクブルのルギドはおとなしく夜をやり過ごし、結局、フォルガルの企ては失敗に終わる。

 さて、一方、何故か素直に言うことを聞き、親しい仲間とドウナルを訪ねたクーフーリンは、と言うと。

 彼は、やっとドウナルの元に辿り着いたと思ったら、今度はアルヴァ東方にある影の国の女王、女武者でもあるスカアハの下で修練するように言い渡されていた。意外と素直なクーフーリンは、仕方なくさらに独りで旅を続け、言われた通りスカアハの元に辿り着いたのであった。

 ここから、彼の修行が始まる。(らしい)

 補足を挟んで続きます。
 
 

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〖参考文献/出典/引用〗
※昔の資料を引っ張り出すことが出来ず比較的新しめの資料群

◉井村君江 著: ちくま文庫
『ケルトの神話―女神と英雄と妖精と』
◉池上良太 著: 新紀元社
『図解 ケルト神話』

〖その他〗
◉遥か昔々に読んだタイトルも作者名も覚えていない数々の本やマンガの記憶のカケラたちと妄想像の山www
 
 
 
 
 
 

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