【エッセイ】クリスマスにサンタになってみた。
サンタクロースの真実に気づいたのは何歳の頃だったろう。
もはや覚えていない。いつの間にか本当のことに気づき、普通の家族イベントになっていったような気がする。
しかし、一回だけ普通の家族のクリスマスイベントではなかった年があったんだ。
ある冬の時期。中学2年の頃だったと思う。僕は自分の部屋でゴロゴロしていると、急に父親に呼ばれたんだ。
『どうしたの?』
『お前24の午後暇か?』
どうしたんだろうと結構びびった。僕は余り父のことが好きではなかったから。買い出しかなにかかなあと。まあ嘘をつくほどのことではない。
『特にないけど』
『じゃあお前サンタになれ』
言われた僕の気持ちを察して欲しい。人生においてサンタになれと言われた人はそんなにいないのではないだろうか。僕の頭の中は疑問符だらけだった。
ようするに、会社の上司の家のお子さんにサンタの仮装をしてプレゼントを渡してくれということらしい。
正直断りたかったのだが、父親が勤務する会社のその上司の方とは家族ぐるみで付き合いがあり、僕もよくしてもらっていた。かなり悩んだが最終的には引き受けることにしたんだ。
当日
上司の家に秘密裏に到着した僕は、寝室のようなところに案内され恐らくドンキホーテかどっかで買ってきたであろう衣装を渡されたんだ。
『あーとうとう来ちゃったよ・・・』僕は大分憂鬱であった。
本当に申し訳ないが僕はそういう仮装みたいなのは好きではない。とにかく恥ずかしいのだ。好きな方には申し訳ないが。
『これも恩返しだ・・』僕は必死に羞恥心と戦いながら服を着た。ヒゲが痒くて痒くて。辛抱しながらプレゼントの入った袋を担いだ。そろそろ出番だ。
『いいよお願い』上司の奥さんが僕をこっそり呼びにきた。変に小声だったのがやけに緊張感をあおる。
居間に入って行くと上司のお子さん。お姉ちゃんと弟さん。何歳だったかな。6歳と4歳とかだったと思う。
羞恥心を振り切って大きな声でメリークリスマスと言って入っていったんだ。いやドン引きされたらどうしたものか。内心は超ドキドキだ。
すると二人そろって『お兄ちゃん!』といって目をキラキラさせてよってきた。まさかのバレバレだった。純真な心には嘘や虚構は通用しないのか。僕は心から汗をかきながらプレゼントを渡して去った。
大役を終えた僕は安堵で脱力していた。すると父親から
『もっとサンタを演じろ』とダメ出しを出されたが、無理をいうな。じゃああんたがやれよと思ったが言わないでおいた。野暮というものですから。
しかし、思うのはいつかは本当のことに気づくと思うから、夢をこわしてないといいなと。その後取り敢えずはなにも言われてないので、大丈夫そうだった。喜んでいたと。
取り敢えず努めは無事終えたみたいだ。
もう数十年会ってないが元気なのかな。
因みにサンタクロースは皆さんはいないと思いますか?
フィンランドにいるという公認サンタクロースの人は別として。
僕はいるかはわからないが、いたらいいなと思う人だ。
昔はいるわけねえだろと思っていた。全部親だろって。
けど、誰も証明できないだろう。恐らく地球創生から現代まで、いるともいないとも証明できた人はいないのではないだろうか。
だから僕はいたらいいなとは思う。僕の所に来る必要はないけど、本当に頑張っている子の所には行って上げて欲しいな。