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ユキイロサイン クリア感想
PC版にて読了。WonderFool作品および冬野どんぶくシナリオは初めて。
ただの気まぐれ且つうみこ先生のイラストのファンという理由で買ったのだが、思った以上に良かった。
ストーリーはほぼカレンダー通り1日ずつ進むものの、テンポ良くコンパクトに濃縮されて読みやすいし、選択肢は個別√に進むための分岐点として1つしか用意されてないので、安心して読むことに集中できた。
うみこ先生によるイラストは立ち絵・イベントCGともに美麗で文句なし。脇役含めてみんないいやつなので、キャラクターで不快になることはないと思われる。
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注意点があるとすれば、上の画像にいる親友の男の子がシナリオに絡むこと、常にスタートから全裸待機している人は個別√までおとなしく服を着ろ、かな。ただ、終わってみればこの5人がいてこそ成り立つストーリーだったなとは思った。無論、主人公とヒロインが恋人になってからのイチャつきっぷりの破壊力は抜群なので、純愛ものが好きな人にはおすすめである。
では、個別に各√を振り返ろうかな。
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共通ルート
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主人公含む5人のメインキャラクターを軸に丁寧に描いてるので、各キャラの性格や人となり、脇役キャラとの関係性等と満遍なく知ることができたため感情移入しやすかった。少々、主人公の影が薄いところは気になったが、これは彼だけボイスがないせいかもしれない。
個別√に分岐するまでは仲良し5人組の日常と学生らしいイベントを見せられただけなので、エ〇ゲであるどころか恋愛ゲームであることを疑うくらい全年齢向けの平和な青春物語で展開されるのが私の中では新鮮だった。ヒロインたちが個別√に入るまで、主人公に明確な恋愛感情を見せないのも驚き。
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もちろん、各キャラとも今後のための匂わせ発言や伏線らしい導線、エ〇ゲなのを思い出したかのように露天風呂CGがワンシーン挿入されるが、個人的に共通√だけでも満足度が高かった。そう思えるくらいに、この時点で完成度が高いシナリオだと感じた。
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個別ルート
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個別√に入ってからは、それぞれのキャラが抱えている悩みや過去のトラウマを乗り越えて主人公との愛を育んでいくことに。ここでも面白いのが、乗り越えるきっかけが主人公の手助けとは限らず、周りのサポートのおかげで立ち直るヒロインもいたりする。そのため、個別√によっては主人公の影が薄くなることも。
また、全員が将来のことを真剣に考えて実行に移すところも面白い。学校を卒業した後はどこの大学にいくのか、将来こういう職業もしくは家業につきたいからまずあの大学にいくなどなど。主人公に至っては、恋人となるヒロインによって全く違う進路を選択するため、いかにその影響を受け決断したかという過程を見るのも面白い。
ちなみに、私はスヴェ→香子→美玖の順に進めたが、攻略順は好みでいいと思う。私はプロローグで登場したキャラの順番でやっただけだが、これだとめんどくさい女度が上がり、だんだんと愛が重くなっていきました。
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スヴェルート
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臆病でお調子者な天真爛漫少女。そして、彼女の性格もあって終始明るい√に。そんな彼女が、主人公への恋を自覚しロマンチックな告白シーンへと至るまでの過程は至高であり、3人のヒロインの中でも王道な恋愛ドラマを描いていると思われる。
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後半からは、なぜスヴェが日本の南逢瀬町に留学してきたかが明かされる。そして、共通√からここに至るまでに彼女がいかにこの町と人々を愛し、逆にこの町の人々がどれほど彼女を愛しているのか、その代弁をホームステイ先の同居人であり、母親のように面倒を見てきた美玖によるクライマックスシーンは必見。何なら、この√の美玖は主人公よりも漢気があってかっこいい。このシーンが一番感情を揺さぶられたかな。それを取り返すかの如く、終盤の主人公がスヴェとの未来のためにやる行動の飛躍っぷりはまた爽快。
この√は一番安定・安心して読める√と感じたし、恋愛模様も初々しくて良かったかな。
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香子ルート
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大人しく素直な性格だが、鈍感な側面もある転校生。実はスヴェ以外の3人とは小さいころに知り合っているようだが、あくまで再会してから仲良くなるきっかけであるため作中で特に拾われない設定となっている。スヴェとは正反対な性格に合わせるかのような√となっており、恋愛面でも主人公に同類のような親近感によって、傷を舐めあうようにお付き合いが始まるためか、中盤まで終始不安定な関係に。
その関係が一度破綻するきっかけが、そもそもの彼女が転校してきた理由であり、それにより主人公との気持ちのすれ違いが起こったため、これからのこと・将来のこと・何より今の恋人関係に思い悩むこととなる。
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この√はまさにここからが本番という具合にギアが一気にかかり、心が折れて自信を喪失した少女がいかにして立ち直るか、また主人公はどうすれば彼女と同じ目線で未来をともに歩めるかを答えを探すのに思い悩み、その後どのようにして手を取り合うようになるかが焦点となる。ある意味で、3人のヒロインの中でもこの時代に身の回りで聞くような等身大の悩みを焦点にあてた青春物語を広く描いている√ともいえる。
特にここでは多くの人たちから助けれられる場面が多々あり、立ち絵がないキャラや大人組も励ましたり支えてくれるために、スヴェ√とはまた違った心温まるストーリーが用意されている。
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それを乗り越えたら後は突っ走るだけなんだが、この2人のその後の恋愛模様は惚気を通り越してもはや暴走状態。告白シーンなんて序の口。登場キャラだけでなく、プレイヤーすら置いてきぼりに二人の世界を作り上げるくらい浮かれやがる。大人しいやつほどヤバいやつはいないよなぁ、としか。イチャラブ好きな方は要注目。
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美玖ルート
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主人公・宗冬とその親友・広中と幼馴染み兼親戚。物事をはっきり言い、怒らせるととても怖いせいで冷たい印象を持たれるのが周りの共通認識となっているが、実際には面倒見が良く素の自分を見せるのが得意でない不器用な一面を持つ。そして、過去の失敗から主人公との関係が一番重く、めんどくさいキャラとなっている。
幼馴染みゆえに、長年積もったドロドロした主人公への恋愛感情がこの√でついに表面化し、両想いであるはずなのに両者とも過去を引きずって自責の念に苛まれて一歩踏み出せずにいるが、その理由もまた感情的に複雑なせいで、他√で大いに助けとなった友人たちも簡単においそれと手出し口出しできない苦しい展開となる。
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だからこそ、それを乗り越えてからの告白シーンは見事というしかないくらい美しいシーンといえる。心が通じ合うというのはこういう場面をいうのかな。何より、主人公が最後の最後に男を見せてくれる√でもある。あとイケメンに限る、ならぬ美女に限る、ともいうかも。
そしてこの√が特殊なのは、終盤に主人公と親友である広中との男友達の関係も描かれている点にある。つまり、美玖との物語でもあり、幼馴染み3人の物語ともなっている。広中は隠しヒロインだった(?)。青春物語として爽やかな結末となっているので読後感はとても良いのだが、女にしか興味ねぇという野獣の人は留意すべき√かもしれない。
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私個人としては、美玖が素の自分をさらけ出してデレたときの破壊力が凄まじいものだったし、広中との件でも主人公が一番主人公らしいことをしていた√とも思うので、総合的には一番気に入っている√ではある。
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総評
公式でもあるが、等身大のありふれたストーリーがコンセプトであり、恋愛だけでなく友情や将来のこともしっかり描いた作品で、特別なことはしていない日常物となんら変わらないかもしれないが、青春物語は得てして登場するキャラにとっては唯一であり特別な日常、それをゲームに限らず映画やアニメ等を通して伝われば見た人にとってもかけがえのないものになる。
そういった気持ちを湧き起こせるのが創作物の良いところだと再認識できた、私にとって思い入れのある作品の一つになったかな。
いやぁ、それにしても美玖さんの破壊力はホント自分には刺さりまくりだったんだけど、本編外のおまけであるアフターストーリーは照れてる美玖さんはめちゃかわいいんだけど、もうこっちまで恥ずかしくなるくらいとんでもないことを・・・やっべ。
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