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クライスタ -CRYSTAR- クリア感想

 PS4版にてクリアしました。難易度はノーマル。

 私がこれをやるきっかけとなったのはクライマキナというゲームに目を付けたことから始まり、調べてみるとそのプロデューサー兼ディレクター兼シナリオを担当したのが林風肖(はやしふゆき)さんで、その人の1つ前の作品が私が以前プレイしたことのあるモナーク、そしてクライスタは処女作品であると分かったために、じゃあクライスタをやってみようかという流れがあったりします。

 いざプレイしてみると、ストーリーや世界観は私好みで、モナークでも出ていた用語がここでもあったりととても良かったのですが、ゲームパートは簡単には褒められないなと思いました。戦闘は私の中では及第点なんですが、それよりもプレイヤーを飽きさせない作り込みが足りないなと感じました。まぁ、低予算・1年開発・少数体制を思えば仕方ないんだろうけど。

 なので、ストーリーや世界観等は褒めて、戦闘はアメとムチを、残りは良くないと思ったことを書こうと思います。

 では感想へいきます。

えんじょいでえきさいてぃんぐ!

ストーリー

あらすじ

 死後の世界・辺獄に迷い込んだ少女・零(れい)とその妹・みらいが出口を探す中、幽者と呼ばれる怪物に襲われると、零は守護者と名乗る謎の存在・ヘラクレイトスの祝福を受けて妹を守るための戦う力に目覚める。しかし、力を制御できず暴走してしまい逆にみらいを殺してしまう。

 絶望する零に辺獄の管理者を名乗る悪魔・メフィスとフェレスが契約を持ち掛ける。みらいを「ヨミガエリ」させる代償に、辺獄に蔓延る幽者を狩る代行者となり、涙より生まれる理念(イデア)という結晶を7つ差し出せと。期限はみらいの魂が辺獄の底にある再生の歯車に到達するまで。零は悪魔たちと契約し、辺獄の底へと向かう、というのがあらすじ。

キャラクターの描き方

 まず、泣いて強くなるというコンセプトのゲームなので零は泣き虫か頻繁に泣くのかなと思っていたら、ストーリーだけなら重要なシーンか、零以外の仲間の誰かが涙を流したりと、大事な場面くらいでしか泣かないのが個人的に意外だった。実際、7つの理念の結晶の分以上は泣いてないんだよな。だからこそ、安っぽくならず意味のある涙になっているのは良かった。

泣くのは感情が高ぶったとき
泣くときは気持ちが後ろ向きとは限らない

 といっても、システム上では戦闘中に泣いてたり、特定の敵を倒すと手に入る断末魔の思念を浄化するために泣いてたりしてますが。

戦闘で思念の断末魔を獲得
メニュー画面にまで侵蝕するので
泣いて浄化

 基本的に暗く重いストーリーで、同行する仲間にも辺獄に来てしまった原因となる辛い出来事がある。ストーリーの合間や現実世界でのスマホ越しの会話で程よく空気を中和してくれるものの、誰かが情緒不安定になったり、気持ちの衝突から関係が一気に険悪になったりと終始気を揉む関係が続くので、仲良しパーティの関係性や百合要素を求める人は注意が必要かも。

左から千(せん)、零、777(ななな)、小衣(こころ)

 ただ、キャラの性格の描き方が丁寧に示されるので心情の理解がしやすい。作中で「エゴ」というワードが頻繁に出るように、キャラの本性というものが見えるからこそ感情移入しやすくなっていると思った。

 例えば、零は途中でみらいの魂に追いつけないかもと焦りだすと周りが見えなくなり攻撃的な言動で仲間に当たり散らすのだが、その時の3人の仲間たちの対応が文字通り三者三様で、各々の一貫した性格がよく分かる展開となっている。思い返すと、それがその後の終盤にかけての導線も兼ねているのが面白いなと思った。

悪魔たちにも八つ当たり

 また、背景の描き方も腑に落ちやすいと思った。例えば、仲間の1人である千は「正義」をよく口癖にするのだが、過去に父親の影響であることが説明されるばかりか父親にとっての正義も詳しく語られる。だからこそ、後にその正義が揺らぐ一大事件が起こると、そりゃそうなっても仕方ないと察せるくらいに描写が丁寧だと感じた。

777の明るさと献身は私にとって心の支えだった

 終盤に近い話では、悪意ある者の掌の上で4人が踊らされるからムナクソ通り越して趣味が悪いなと感じたけど、終盤で泣く必要のないくらいの熱い大逆転劇は大好物でした。

 キャラの感情の機微に関しては声優の熱演が光っていた。零役の近藤玲奈さんの喜怒哀楽の感情表現は凄まじく、序盤の陰気で友達0人の引きこもり少女の演技から、終盤の少年マンガのように激情的で熱い少女の演技の変化も素晴らしかった。他にも、諸星すみれさん演じる777の純粋無垢でアクのない演技は、私にとって心の清涼剤であり癒しになりました。

他にもベテラン勢ではヘラクレイトス役の中田譲治さん
敵のアナムネシス役は井上喜久子さんなど

 なので、ストーリーや世界観だけでなくキャラの見た目でも惹かれるようならプレイの検討をしてもいいのではないかなと思う(私は零の私服姿が一番好き)。私の優先順位はストーリーなので、十分に満喫させてもらいました。

やり込み

 これは少なめかなと思う。

 1つは収集要素。前述した思念の断末魔を浄化すると装備が手に入る他、ニーアシリーズやDODシリーズのような敵のフレーバーテキストが解放される。本編と関係ない小話が読めるだけでなく、本編登場キャラの裏話が読めたりできた。

 2つは装備の強化。同じ装備を合成すると強化されるだけでなく、1行だけではあるが武器のフレーバーテキストも段階的に解放される。

付けたい能力付与があるなら、ロードして根気よく回そう

 あとはクリア後にボスラッシュが解放されるくらいで、周回はできないみたい。

音楽

 ピアノとヴァイオリンのメロディが美しいだけでなく、盛り上がるところはしっかり盛り上げてくれる。CDはもうないようで、配信でしかサントラは手に入らない模様。

 また、やなぎなぎさんが歌うOPとED曲もとても良かった。特にOPはシャフト制作のアニメーションとの相乗効果もあって、毎回ゲーム開始前にOPを流すくらいには気に入った。

戦闘

 通常攻撃をしながらSPを消費して発動するスキルで大ダメージを狙う、万人向けでオードソックスなシステム。4人の操作キャラのうち1人だけを動かし、自分の好きなタイミングで入れ替えながら戦うようになっている。

 PS4版では、アプデでダウン中の敵にも攻撃できるようになったおかげなのか、ハメ攻撃が可能になっている。また、一部のボスはアーマーが付与されてないために通常攻撃でも怯み、永遠にタコ殴りすることもできる。

ずっと俺のターン!

 大味ながらアクションゲームが苦手でも簡単に操作できるシステムだが、爽快さには今一歩届かない印象。一番気になったのは、ボタンの入力受付が長く、キャンセルができないところかな。

 1回の攻撃モーションの終わりギリギリまで次の入力を受け付けるために、例えば「通常攻撃を連打してたら、敵の攻撃が来そうだったので回避入力に切り替えたのに、通常攻撃が出て避けられなかった」といったことがあった。大手のアクションゲーム感覚でやってるとこういう目によく合っていたので、リズムよくポンポンと押すよう心掛けた。

 また、覚醒ゲージが満タンになると守護者を呼び出せるシステムも今一つ。追加ダメージが入り必殺技を発動できるようになるが、致命的なのはピカピカ光りすぎて画面が見にくくなり、守護者の図体が大きすぎて操作キャラと敵を覆い隠すんですよね。はっきり言ってジャマだった。

動いても何してるか分かんねぇ必殺技

 ただ、レベルデザインはRPGらしくよくできていたように思えた。レベルと装備を整えばちゃんと強くなったと実感できるし、敵が物理と魔法どちらかの弱点を持っていればゴリゴリ体力を削れる。ちなみに、私が良く使ってたのは零と777。零は攻撃範囲とスキルによる総ダメージがおいしく、777は単純に遠距離攻撃が強かった。敵味方ともに遠距離攻撃の射程が無限だしね。

無双できるスキルだけなら爽快さはあるかな

良くないと思った点

 始めに言った通り、飽きさせないようにするための作り込みがクライスタの場合はストーリー以外だと圧倒的に足りてないんですよね。変化に乏しいから、モチベーションが保てるか心配になるレベルでした。

・マップが使いまわし
 こちらがクライスタのマップの1つ。

 スタートからゴールまでを目指すだけの種も仕掛けもない単調なもの。スタート時点ではマップの詳細は明かされず、進むと詳細が見えてくるようになる。1つのステージに3つのエリアが用意されており、マップ踏破と敵全滅を目指すと、1ステージにつき最短は30~40分くらい。

 背景やBGMは色々変わるんですが、3D空間なのに2Dダンジョンみたいな道を進むだけだから味気ない。移動中はマップか地面ばかり見てた。これだけならまだしも、マップを分割して次以降のエリアで再構成しているんですよね。いや、プラレールじゃないんだから。なので、次のマップに移ると「ここ、前のエリアでも通った道じゃね?」「ここのT字路、前のエリアと全く一緒じゃん」て感想が私の中でよく出ました。

背景は凝っている

 まぁ、まだこれくらいなら私は許容できますよ。分かれ道の先が袋小路でイラっとしてもね。だって、このゲームはアクションRPGですから。

・敵が使いまわし
「・・・うっそだろ、お前ぇ」と、絶句しましたね。敵の種類の数は仲間が4人揃って以降は頭打ち。同じ姿の敵をストーリーの章毎に色を変えて強化。序盤から出てくるやつだと終盤までレギュラー出演し、本編クリアまでの数を合わせるとなんと色違い9体も確認できた。さすがにボスはそうでもないが、その中でも使いまわしのくせに無駄に体力があるだけのブルバギは許さん。

おや、いつもの常連さん、今日は緑の服を着てるのかい

・戦闘+上記2つの使いまわしで作業性アップ
 
上記の使いまわしがあるせいで、戦闘の単調さが際立って飽きやすくなってるのが痛い。私みたいにストーリーが気に入っている人や、RPGとかのレベル上げ作業や経験値稼ぎ作業を苦にしない人ならまだモチベーションを保てるだろうけど、アクションゲームを求める人だと変化に乏しく退屈で苦行かもしれない。

・周回前提ストーリー
 ネットでは近しいものにニーアシリーズをあげる人がいます。システム的にはそうなんですが、ストーリーの展開的にはループものが近いです。なので、ストーリーは真実の奥の更なる真実が明かされたりと面白いのですが、プレイヤーはストーリー後半から再スタートし、同じステージと同じ敵(ボスを除く)を相手に3周分こなすことになるので賛否がはっきりしそう。

総評

ラスボス前のメニュー画面

 後半は色々文句言ってたけど、ストーリーやキャラクターが気に入ればそれだけでもモチベーションは保てると思う。私自身はそれくらい世界観は魅力的だったし、開発陣もそこを中心に力を入れているみたいなので、アクションゲーマーよりもRPGゲーマーに向いているゲームかなと思う。零役の近藤玲奈さんを中心に、敵味方ともに声優の演技が良かったのでそれ目当てもありかな。

 私はクライスタ及びモナークといった林風肖プロデュースのゲームはストーリーと世界観が気に入っていったので、このままクライマキナもプレイしてみたいと思ってます。

感想は以上!



[余談1]:PS4版 vs NintendoSwitch版

 さて、この見出しの意味。実はPS4版は大昔にフリープレイで提供されてて、私は念のために取ってたんです。で、それをすっかり忘れてしまって、後にDLC全部入りのswitch版をセールで購入するという泣きたいエピソードがありましてね。

 だったらと開き直り、せっかくなら序盤を両方プレイしてみてやりやすい方でやろうと決めたんですね。参考までにその動画がこちら。

 私は快適にアクションゲームをしたく、携帯モードでやらないことからPS4版に決めました。DLCもコスチュームばかりでしたし。あとの細かな違いだと、ロード時間はコンマ差でPS4版が早い、switch版でのPROコントローラーのレスポンスがイマイチ、BGMの音圧はPS4版の方がある、背景の処理能力の差、といったところを感じました。

[余談2]:興味深かったインタビュー記事

 私は設定資料集とかを読み込むのが好きなんですが、クライスタのインタビュー記事もそういう趣旨が多くて読み応えがありました。それらを読むまでは、てっきり林風肖さんによる俺による俺のゲームかと思ってたのですがそれは違ってたようで、結構プロデューサーとしても立ち回ってたみたいなんですよね。

 例えば、ストーリー原案は林さん自身なんですが、シナリオ担当は久弥直樹さんが担ってて、彼の提案でもともと存在しなかったキャラの1匹・飼い犬のセレマの登場を採用したらしいんですね。

モフモフ

 それをポロッと発言したインタビュー記事がこちら。

 また、零たちが変身するようになったのは、キャラクターデザイナーのリウイチさんとntnyさんが「魔法少女ものにしてほしい」と林さんに提案して実現したとのこと。そのインタビュー記事がこちら。

 結構柔軟に対応しており、いろんな人のアイデアが詰め込まれていると思うと、ゲームっていいなと思えるんですよね。

おわり!

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