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随筆

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#朗読

社会と言語活動の関係

言語活動は私たちが人として社会的生活をいとなむために不可欠のものです。それゆえにそれはある「型」や「ルール」を私たちにもたらしています。その型やルールが私たちの純粋な表現の質にあたえる影響を検証してみる必要があります。朗読表現において、私たちの純粋な表現欲求と社会性をどのようにとらえればいいのか、どのように扱えばいいのか、かんがえてみます。

ことばを使ってコミュニケーションをおこなう、ことばを使

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映画:スティーブ・ジョブス

2015年公開のアメリカ映画。
それにしても、日本版のポスターのキャッチコピーはずいぶんだと思いませんか。
こういうの。
「最低な男が、最高の未来を創った」

最低な男って……

ジョブス役をマイケル・ファスベンダーという男優が演じてます。
知らない名前だなあと思って調べてみたら、けっこういろんな映画に出ているみたいですね。
「プロメテウス」「ジェーン・エア」、そして「シェイム」では主演して数々の

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ことばと頭と身体

一見、矛盾しているように思えますが、現代朗読ではパフォーマンスにおいて「たくらみ/思考を手放す」ことをトレーニングします。
「この部分はこう読もう」
「ここはこういう意味だから、こんなイメージで読もう」
「ここからシーンが変わるから、テンポとトーンを変える」
「練習どおりにやろう」
「アラが出ないようにうまく読もう」

これらはすべてたくらみ、もしくは思考であり、それらのことが「あたま」を占拠して

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楽しい朗読、再確認

現代朗読協会が法人として認可を受けてから満10年がたちました。
その前身である朗読研究会から数えると、約15年がたっています。

私の誇りは、この団体が完全にインディペンデントであり、現代朗読という手法を他のどの朗読団体の影響も受けずに進化/深化してきて、ここにいたっている、ということです。

数多くの実験と実践をかさねてきて、ほかのどの朗読団体にもない方法論を確立し、それはまだ進みつづけています

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日常のことば、朗読のことば

 私たちは生まれて以来、ことばを聞き、話し、たえず発音・発語の練習をしながら成長してきました。朗読表現では、その私たちが使いなれたことばを使います。
 では、日常で使っていることば・発音・発語と、朗読表現でもちいることば・発音・発語とでは、なにがどう違うのでしょうか。それともなにも違いはないのでしょうか。

 私たちが日常で使っているのは「自由言語」であり、社会共通の約束ごととして学習し、身につけ

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【朗読生活】身体に気づく

朗読という表現は、外形的には書かれている文字を読みあげる、という行為であるため、どうしても「書かれている文字の内容」やそれをどのようなテクニックを持ちいて読むか、という点に目が向きがちです。
もちろんそれらも必要なのですが、表現行為としてはそこに「自分の身体」の存在があきらかになっていなければおもしろくありません。

ちょっと想像してみてください。

本の内容についてとても熟知し、読解を深め、何度

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朗読を通して自分を知る

朗読をふくむ表現行為では、表現者の意識や感情、身体そのもの――つまり生命存在が他者に伝わる。
そもそもそこにある生き生きとした存在の表われを、できるだけ妨げないようにしたい。
しかし、後天的に社会性を身にまとい、そのふるまいを習慣として鎧のように着身してしまっている私たちは、しばしば生き生きとした表われをいろいろな方法で妨げてしまう。

なにが自分の表われを妨げているのか、自分自身がなにをやってし

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表現と生活

朗読生活とは、朗読という表現行為を日常生活の一角に置くことで、生活すなわち人生の質をいくらかでも変化させようという試みのことだ。
表現行為とは自分自身を外にむかって表わすこと。
外というのは他人であったり、家族であったり、リスナーであったり観客であったりするかもしれない。
場合によっては「だれもいない」こともありうる。

だれもいないのに自分自身を表わすことに意味があるのか、と思う方もいるかもしれ

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伝達と表現

本、あるいは書いてある文字を、声に出して読みあげる行為を朗読というが、目的はさまざまだ。
しかし、その目的は、大きくふたつに分けることができると私はかんがえている。
ひとつは本の内容を聴いている人に伝えるもの。
つまり伝達。
もうひとつは朗読という行為そのものを、それをおこなっている人の存在をも含めてまわりに伝えるもの。
これを表現という。

世の中にはさまざまな表現行為があるが、たとえば音楽の場

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朗読生活の心得

現代朗読ではつぎのような原則を大切にしている。

・こう読まなければならない、というものはない。
・こう読んではいけない、というものはない。
・どのように読むかのの根拠は、自分の外側ではなく内側にある。

朗読を学ぶ、練習するというと、たいていは、読み方やルールを覚えたり練習したり、あるいはやってはいけないことを習ったり、といったことをイメージする人が多いだろう。
そもそも、「どのように読むべきか

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朗読生活をはじめるにあたって

現代朗読協会が正式に特定非営利活動法人(NPO法人)として東京都から認可を受け、旗揚げ公演「おくのほそ道異聞」をおこなってから、ちょうど満十年が経過した。
振り返ってみると、ずいぶん遠くに来た感じがある。
多くの講座、公演、社会活動をおこなってきたが、けっしてまっすぐ進んできたわけではない。
むしろ、ずいぶんあっちへ行ったりこっちへ来たり、紆余曲折に満ちた十年であったように思う。

ここ数年は、し

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