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エッセイ / 地面だいすき
昨日、生まれて初めて、自分が地面を愛していることに気がついた。
あ〜〜〜、地面だいすき!!!
実際にそう叫びもした。
それは、高いところでの作業を終えて地上に戻ってきたときに思わず口をついて出た言葉だ。
昨日は小屋の屋根工事があったのだ。
この小屋の
屋根にのぼって
のぼって
木材を打ちつける工事をしました
小屋の高さは、高いところでは3mを超える。足場にするのは、自分たちが昨日まで作ってきた壁たちだ。ちなみに、漏れなく大工仕事初心者である自分たちが作ったその壁への信頼は、コンドームほどの厚さしかない。まあ、端的に言えば、めちゃめちゃ怖い作業なのだ。(命綱もつけずに作業していたことは後から師匠にしっかり怒られた)
だから一通りの工事を終えて地上に降りたときには心からホッとしたし、気がついたら地面に愛の告白をしていたのである。
そしてそれからというもの、ただ歩いているだけで、一歩一歩、地面を踏みしめられるというだけで、嬉しくてたまらないのだ。こんなにもどっしりと安定したもののうえに生きていられることに、感謝が止まらないのだ。
自分はずっと、こんなにも地面に支えられて生きてきたんだ。そんなこと、今までまったく気がつかなかった。
歩くだけで、こんなにも嬉しく、感謝に溢れた気持ちになれるなんてすごいことだ。でもきっと、地面だけじゃなく、私の身の回りを取り囲むあらゆるもの全ては、本来奇跡のようにありがたく素晴らしいものなんだと思う。私たちはただ、それに気がつけていないだけなのだと思う。それらが生まれたときから与えられていたから。あまりに当たり前すぎて。
高所作業は怖くてたまらなかったし、なるべくならもうやりたくないけど、こうして地面の存在に、ありがたさに気がつけたことは、本当に幸せなことだと思う。大袈裟かもしれないけれど、なんだか自分は楽園に生きているのだという気がしてくる。
さて、今日も屋根工事である。うまくいけば今日で工事が終わる。憂鬱でないと言えば嘘になるが、地面への感謝を胸に刻み込むためにも、今日も晴れ晴れと地面を離れよう。