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コミカルに、人生がうまくいっていない報告をしなおそう

昨日、親愛なるお友達のnoteを読んでいたのだけど、それがあまりに面白くて夜な夜な読み漁ってしまった。「血にはおたふくソースが流れている生粋の関西人」と自称する彼女は、離婚をはじめとした大変な出来事も、声をあげて笑っちゃうくらい面白く記事にしていた。もちろん彼女も苦しい思いをたくさんしたに違いないのだけど、それでもそうした経験をすべて「コミカルに話す」と決め、多くの人に笑いを届けていた。

そんな彼女のnoteを読んでから前回の自分のnoteを読み返すと、急いで部屋を換気したくなるほど辛気臭い。目にツーンときて涙が出てきちゃうタイプの臭さ。私は自ら率先して、なんなら嬉々として、じめじめとした悩みのなかに留まろうとしているようにも感じられた。そこで私も彼女を見習い、「人生がうまくいっていない報告」をコミカルにやり直してみようと思う。

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そもそも今回の休職騒動は、私が3年間の田舎生活からいきなり都心の会社員に舞い戻ったことに端を発している。振り返れば、私がいまの会社の採用フローに乗るにあたって提出した職務経歴書の時点でいろいろとおかしかった。

新卒で勤めた会社を辞め、山奥での自給自足の修行に繰り出した私は、まさか自分が普通の転職活動をすることになるとは夢にも思っていなかった。だから「職務経歴書に書けるような成果を…」なんて意識は微塵もなくて、ただただ田舎での生活に打ち込んでいた。市場価値では測れないものを大切にしたいと思って田舎に飛び込んだので、それは当然のことでもあった。

そんな私が職務経歴書を書こうとすると、「有機農法での野菜および米の生育・収穫」「鶏・山羊の飼育」「キノコの原木栽培」といった、およそ職務経歴書には似合わない文言が並んだ書類ができあがる。念のため言っておくが、農家への転職ではなくビジネス職への転職である。このような、極めて牧歌的な職務経歴書を提出したビジネス職の人間は、世界広しといえども私くらいなんじゃなかろうか?

そして自己PRには「草刈りが得意で、体力がある」「地域のおじいちゃんとおばあちゃんの長話をめちゃくちゃ傾聴できる」といったことを書き連ねていた。繰り返すが、都心にオフィスを構える会社の、ビジネス職への転職である。なんでこんなことを書いていたのかといえば、応募する業務には役立たない経験でも何も書かないよりはましだろうと思っていたのと、自分のありのままの姿をさらけ出した書類を提出することでこそ、自分に合う会社が見つかると思っていたからだった。

結果的には、1名しか募集していない、なかなか競争率が高そうな枠だったにも関わらず、なぜか採用してもらえた。とても嬉しかったし、この書類を読んだうえで採用してくれるなら、自分らしく働ける環境だろうと思った。

ちなみに入社後、未経験の仕事ばかりで悪戦苦闘していたとき、会議で「出資先の牧場のフィールドの草刈りをしなくてはいけない」という議題があがった日があった。「ここにきて初めて、私の田舎暮らしスキルが活かせるチャンスが訪れた!」と目を輝かせていたら、当然のように、私たちより圧倒的にコストの安いシルバー人材の方々に委託することが決まった。そのときは、自己PRに「草刈りが得意」などと書いていた自分の世間知らずさを突きつけられたようで結構凹んだが、こうして振り返ると、自分ってかわいいやつだなあと思う。修行先の広大なフィールドや、村の山林の急斜面で磨きをかけた草刈りスキルは、祖父の家の庭で存分に発揮してあげたらいいよ。

よくよく思い返すと、入社前に参加した会社主催のイベントでも、ちょっと面白い体験をしていた。イベント会場のトイレは、性別ではなく「どう使うか」を基準に部屋が分かれている、最先端のトイレであった。戸惑いながら「Relax」と表示された個室に入ると、暗がりに暖色系のライトがやわらかく灯る、まるで岩盤浴ルームのような空間が広がっており、室内にはアロマの良い香りが漂っていた。当時自分が住んでいた村からそのイベントに直行していた私は、突然時空が歪んで100年後のトイレに迷い込んでしまったのではないかと思った。実際、その日の日記を読み返すと、「異世界。なんじゃ〜あの洒落たトイレは……」と書き記されている。お前のその口調がなんなんだよ。

もちろん田舎にもきれいなトイレは沢山ある。そこは田舎の名誉のためにも強調しておきたい。しかし、当時私が手伝っていたプロジェクトは山奥を主な活動フィールドとしており、そこでは古くからあるボットン便所や、自分たちの手でつくった「風の縄文トイレ」を主に利用していた。風の縄文トイレとは、簡単に言えば地面に穴を掘っただけのトイレだ(とはいえ穴を掘る位置や深さを工夫し、空気と水の動きを利用することで、しっかり排泄物が分解され、臭いもでないよう設計された、快適なトイレではあるのだが)。そういう意味では、私はトイレ界において、100年どころか1万年以上の時空を数日のうちに旅していたのだった。そりゃあ古老のような口調にもなっちゃうよ。

こうして転職にまつわるエピソードを振り返ってみると、「そりゃあすぐにはうまくいかないだろうよ」と自分にツッコミを入れたくなった。「入社後すぐに活躍しようなんて思っていた自分の考えがそもそも甘すぎたし、無理があったよな」、冷静にそう思えた。むしろ、「時差ボケで一日中起き上がれないほどの時空を行き来しながら、よくやってるよ」とさえ思えてきた。

コミカルに話すのってすごいなあ。昨日までは自分ってだめだなあと思っていたのに、むしろよくやってるじゃんと思えるようになっちゃった。これからも、時には辛気臭をプンプンにおわせながら、時にはコミカルにヘラヘラしながら、自分の人生を綴っていこう。

最後に、私のお友達が書いている最高のnoteはこちらです。


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