詩 / 敵はどこだ - R.I.P. Ryuichi Sakamoto
敵はどこだ?
憎き彼らを すみやかに処刑せよ
しかし全滅させてはいけない
敵はどこだ?
彼らがあちらにいる限り
僕はこちらに安住できる
だからはやく 敵をよこせ
敵はどこだ?
彼らは僕を脅かす
同時に僕は 彼らに生かされている
敵はどこだ?
僕の家が建っているのは
殺してきた彼らの死体の山の上
敵はどこだ?
僕は彼に向けて刀を抜く
彼は僕にキスをする
敵はどこだ?
斃れたのは彼
斃れたのは僕
敵はもういない
僕ももういない
***
坂本龍一さんが亡くなった。私にとって、坂本さんが主演をつとめた映画「戦場のメリークリスマス」と、彼が手掛けたテーマ曲「Merry Christmas Mr.Lawrence」は、すごく大好きで特別な作品だ。
坂本さんが昨年末に「これが最後になるかもしれない」とオンラインで配信したコンサート映像のことを今朝はじめて知り、YouTubeで観て朝から泣いた。そして「戦場のメリークリスマス」をテーマにした詩をつくりたいと思い至り、昂った気持ちのまま詩を書いた。Amazon Primeで、バックに作品を流しながら。思い立ったその瞬間にお目当ての作品の鑑賞を始められる、なんと贅沢な時代になったもんだろう。
「Merry Christmas Mr.Lawrence」は言わずと知れた名曲だけど、映画「戦場のメリークリスマス」を観てはじめて完成する曲だと、個人的には思ったりする。皆さんもぜひ、これを機に観てみてください。
以下は本当に最後になってしまった、坂本龍一さんのコンサート映像。視聴者から動画へのコメントに、「This is truly a performance of the soul.」というものがあったけど、本当にその通りだなと思う。
坂本さん、ありがとうございました。心から冥福を…と書きそうになったけれど、その言葉はまだ自分の言葉になりきっていなくて、形式的なものになってしまいそうだから、ただ感謝の言葉を。本当にありがとうございました。