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意志による楽観
私の姉は中学1年生から習い始めたヒップホップダンスを生業としてダンス教室の先生をしている。
お尻近くまである長く真っ黒な髪に、細かいパーマを全体にかけ、派手な洋服をまとい、大きな声と豊かな表情で笑う。日本人離れしたその姿と表現力は誰もが引き込まれる。シャイとはかけ離れた人懐っこさとその明るさは、天真爛漫という表現がぴったりだ。
ただ、その天真爛漫さは天性のものではないことを私は知っている。
明るさを誇示する彼女にはそう在りたいという意志があることを。
姉は大好きな人との間に子供ができた。
自然と結婚を願った。
当時学生だった彼を父は許さなかった。
子供を失い、大好きな彼とも別れることに。
その彼は別れた後、別の女性と婚約した。
裏切られたと彼女は思った。
しばらくして2人はヨリを戻した。
どんな理由かは知らないが、その彼は婚約破棄をしたらしい。
両親にも友達にも兄弟にも隠して付き合っていた。
言えるわけがなかった。
自律神経失調症を患った。
「自分の大好きな人に大好きな人と会っていることを言えないことがつらい」
病気になるぐらいならと母は父を説得して、ヨリを戻してから2年後、やっと結婚ができた。
結婚は叶ったが、子供ができなかった。
不妊治療をしながら、一度子供をおろした自分のせいだと自分をせめた。
そんな中、私は計画をしていなかった妊娠をした。
仕事が楽しかったのでまだ子供はいいかなと思っていた。
姉が不妊治療をしていたことも知っていたのでどう伝えるべきか悩んだが、気をつかわれるのは余計嫌だろうと思って電話をした。
「よかったねー!!!おめでとうー!!!!」
その明るい声に違和感を感じて、母に電話をした。
母は教えてくれた。
私と話した直後に、姉が大泣きして声にならない声でこう話したらしい。
「一番喜んであげたい妹の妊娠を、心から祝えない自分が嫌だ」と。
その後、彼女が彼女の意志で自分には子供ができなくてもいい。
心から祝ってあげようと意志をもった時、自然妊娠で子供を授かった。
今は2人の子供にめぐまれ大好きな彼と一緒にいる。
彼女の楽観は意志によるものだ。
あの明るさは暗い自分を知っているからこその明るさだ。
そんな彼女を私は心から深く尊敬している。