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【万葉週話62】秋の露の歌

こんにちは、朝晩の涼しさが増すこの頃、
夏の浴衣を手放す寂しさと
秋の着物を着る喜びの狭間で揺れ動き中の
絵本&万葉作家のまつしたゆうりです。

何かを手放す時は、新しい物を手にする時でも
ありますよね。
「手に馴染んだこれを、もう少し…!」と
ねばって手放さずにいると、だいたいロクなことに
ならなかったりしません?

思わぬことで体調&状況等々に影響が出て、
強制的に手放させられてしまうことになったり…

浴衣の場合だと、朝方の冷え込みに耐えられず
「風邪をひいてしまった!」となるわけです。

何事にも旬があり、ちゃんと味わったら
サッと手放す潔さを持ちたいもの。
その儚さに、美しさや価値があるのかもしれません。

今日お話する“露”も、そんな季節限定の儚いもの。
でも、儚いからこその圧倒的魅力、一緒に味わってみましょー!

露ってどんな時に詠まれるの?

①季節

露は圧倒的に「秋の歌」として万葉集では詠まれています。
(「梅の下枝」(春初め)とともに詠まれたものも
少しありますが極まれ)

秋といえば「霧」も景色の要素として多く詠まれますが
この霧が更に冷えると露になります。

夏に大量発生した「湿」が
秋の冷え込みとともに「霧」となり
「露」になる、という自然現象が、
身近な物に見立てられたり、さまざまな気持ちと
詠まれます。

②時間

露が発生するには寒さが必要!

ということで「夕・夜・暁・朝」と、
日没〜日の出までの時間帯が多。

夜に逢瀬をする“妻問婚”形態の奈良時代において
「恋人に会いに行く時間」&「恋人を待つ時間」
でもあるので、その心情を重ね合わせて詠まれてもいます♪

③場所

露は家の中では降りにくいもの。

当然、山や野辺など、霧が多く発生する場所が
詠み込まれています。

妻問婚で、恋人に会いにいく道すがらでもありますよね。

④一緒に詠まれるもの

秋の草花でいえば
萩、尾花(ススキ)、穂(稲穂)、梨、下草。
色付く、の語と一緒に詠まれることも。

動物ではダントツで鹿!
秋の繁殖期に妻請いで鳴く声も印象的ですよね。
(また鹿の回でお話します🦌)

露=すぐ消える、ということで
儚いものとしての側面も。
散る、消える、命、などのワードとともに詠まれたり、
衣が「濡れる」ことから涙のイメージも。
(袖で涙を拭っていたんでしょうね〜 NOハンカチスタイル)

物悲しい秋、何かと悲しげな景色で詠まれる歌も多いなか、
私がイチオシしたいのは次の3首!

●共著書『よみたい万葉集』でも取り上げた
 クローズアップから壮大な景色に展開する恋の歌

●メルヘンファンタジーな空想あふれる美しい景色を詠んだお歌

●“あの歌人”らしい、もにゃっとしたヘンテコさ(?)が伝わるお歌(笑)

で、お送りします*

恋人へクローズアップ、から、天空へ!

一首めは萩とともに詠まれたこのお歌。

万葉集 2225 詠み人知らず

我が背子が かざしの萩に 置く露を
 さやかに見よと 月は照るらし


(訳)私の愛しいあなたが、髪に指す萩の上に
置かれている露をはっきり見なさいと月が照っています

なんて清々しく、愛に溢れたお歌!

愛しい恋人

恋人が挿頭(かざし)にしている萩

萩の上の露

露に映った月

天空の月

と、ミクロ世界に絞りきった先に
マクロの世界へ切り替わる情景描写が見事だなと!

そこまで恋人に夢中になっている自分を
月の視点から冷静に見つめ直せているのも
大人な恋を感じさせるところ。

ミクロとマクロ、冷静と情熱のあいだ…な
2視点を行き来するのが魅力な歌です。

鹿が作るアクセサリー

2種目はメルヘンファンタジーな空想に胸キュンな
このお歌。

万葉集 1547 藤原八束

さ男鹿の 萩に貫(ぬ)き置ける 露の白珠(しらたま)
あふさわに 誰(たれ)の人かも 手に纏(ま)かむちふ


(訳)牡鹿が、萩に貫いて置いた露の真珠を
軽々しく、誰が手に巻こうというのか

牡鹿が露を連ねて作った、なんて素敵なイマジネーション!

鹿がせっせと作っている姿を想像するだけで
ふふっと心がまあるくなります。

この歌は「五・七・七」を2回繰り返すリズムの
旋頭歌(せどうか)というタイプのもので、
声に出して詠もうとすると いつもとの違いが
ちょっと面白いのでぜひ試してみてください♪

(最後の「巻かむちむ」が早口言葉並に言いにくい(笑))

この歌を詠まれた藤原八束(ふじわらのやつか)さんは
“もっちゃん”こと大伴家持と歌のやり取りもあったりして
なんとなく腹黒一族のイメージのある藤原氏(大失礼)
(権謀術数に長けていそう、と言い換えてもたいして変わらないか…)
の中でも性格良さそうな印象を勝手に抱いています。(笑)

(お歌からもそんな素敵な気配がするので、また取り上げます!)

八束さんの母は、橘諸兄(たちばなのもろえ)さんの
妹なので、対立する橘氏と藤原氏の狭間で
常に揺れ動く心情だったのでは…と。

親戚同士の結婚過多で、家系図がややこしく
見るのも嫌煙しがちな奈良時代の人物相関図ですが(笑)
「この人とこの人、つながってるのかー!」の
「なるほど!」があると、より歌の深みが増して
面白いこの頃です。

「何回“秋”って言うねん!」ってツッコミたくなる歌

万葉集 1597 大伴家持

秋の野に 咲ける秋萩
 秋風に なびける上に 秋の露置けり


(訳)秋の野に咲いた秋萩が秋風になびいている上に秋の露が置いている

や、もうこれ最初に読んだとき
「笑わそうと思ってるのかな?!」と
本気で悩みましたよ…

本人としては大真面目で作ってるところがもう
たまらなくツボで!!!

昔の映画やドラマ(特撮)で、当時は真剣に作ってるのに
ジェネレーションorカルチャーギャップにより
今観たらヘンテコ&ヘッポコに感じちゃう作品が
“お笑い”枠として大好きなんですけど(大失礼2回目)
その感じに似てるんですよ〜(笑)

このお歌も、中国の詩に影響を受けて作ったようで
漢詩では同じ言葉を繰り返すのって結構あるらしいんです。

でもそれは、中国語の響きだから映えるのであって、
それを日本語で、歌にしちゃったら…ねえ(笑)

内容も音の響きも全く頭に入ってこない、
「秋、秋、言ってた歌だな〜」って印象しか残らない歌に!!

それを自分で気付かないところも、
気付いていたとしても堂々と載せちゃってるところも
“もっちゃん”の“もっちゃん”らしさだな〜と
別の意味でお気に入りの歌です。

共著書『よみたい万葉集』では
キャラクターソングの家持欄に載せてますっ☆

いかがだったでしょうか。

またいつか、切ない露の歌も
特集したいなと思います♪

インスタライブ📺アーカイブ↓


来週のインスタライブは特別ゲスト回

🎉来週11時〜のインスタライブは
 ゲストをお迎えした
 スペシャル対談会!

なななんと!!

『#ことのは!#万葉恋日和』の監修も
されている東京大学文学部教授の
#鉄野昌弘  先生と #湯原王 (ゆはらのおおきみ)について
お話いたします〜✨

“いつでも、何度でも恋してる(私が)”
のキャッチフレーズでお馴染み(?!)の
“ユハさま”こと 湯原王さま。

万葉界のアイドル・ 志貴皇子(しきのみこ)の
息子で、歌数は少なく謎多きお方ですが
どの歌も魅力的で…!!

鉄野先生は、そんな湯原王の1552番の
お歌がイチオシとのこと。

夕月夜(ゆうづくよ) 心もしのに
 白露(しらつゆ)の 置くこの庭に こほろぎ鳴くも

(訳)夕月夜、心がしおれるほど白露の置くこの庭に
秋の虫が鳴いている

ふおおー!!!
何度聞いても、なんってトキメクお歌なの!!
(大興奮)

奇しくも、私もそのお歌でユハさまに
恋に落ちたので…❤️
そんなお歌の魅力についてやなど
いろいろ聞けたらなあと*

なにより、ご紹介くださった編集さんの
「万葉集より鉄野先生が好き!」
が伝わってきてメロメロにさせちゃう魅力って
どんなかしら?と、わくわくしております♪


よかったら皆さまもリアタイにて参加、
コメントぜひぜひお待ちしています〜🎶
(先生へのご質問コーナーも設けます)

※先生にご質問したいことあれば
 こちらのコメント欄にぜひ♪

📺ユハさまこと #湯原王 のインスタライブ回アーカイブ↓
(2021年3月投稿分)

インスタのフォローはこちら↓

今週のお着物

秋の下草な柄の麻のお着物と帯、
ガラスの帯留めを露に見立てて

部活報告

部員ナンバー、続々とご申告ありがとうございます!

万葉集のお気に入りの歌番号を
マイ部員ナンバーとして申告→
お気に入りの歌番号が自然と覚えられるという
玄人に一歩近づける素敵システムです(笑)

(監修してくださった先生が、さっと
番号を仰るお姿が格好良くて
「そこにしびれる、あこがれるぅ!」状態なのです(笑))

なにかイベントにご参加くださるときなどに
部員証カードを発行したりなんか楽しいかなあと
妄想ふくらませております、よかったらご申請くださいませ*
(コメントに書くだけです)

年末には“今年一番キュンとした歌”総選挙
的なこともできたらなあと!

インスタライブでご紹介した歌以外でも
もちろんOKです♪

せっかくなので皆さまと一緒に
いろいろ万葉集と遊べたら嬉しいです〜❤️

絵本作家・万葉&民話作家 まつしたゆうり

「心をつなぐ扉を描く」水彩画

共感覚で感じる色と模様を描く。
昔から伝わる物語を、今に届く形にして
お届けしています*

大阪在住、滋賀県長浜出身
大阪芸術大学デザイン学科卒



🌟第5刷 『よみたい万葉集』

初心者から中級者まで楽しんでいただける入門書。


中見パラパラ見れます📖✨↓
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一面に田んぼの広がる田舎町で、
虫と草花と、本を友として育ちました。

幼い頃から 古典と歴史と仏像と恐竜と特撮と漫画とアニメが大好き!
心に触れることで果てしない空想の旅を一緒にできるような作品を作っています。

ゆったり季節に寄り添う暮らしと、日々 野鳥観察&着物。
鳥は愛でるのも食べるのも好き。

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◆日々の活動  Twiter @yu__li
◆日々の暮らし  instagram @matsushita.yuuli
◆イラストまとめ  instagram @yuuli_illust
◆作家活動まとめ  facebook  @matsushita.yuuli

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