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my_ボトルレター

【第1章:現状ときっかけ】

「おめでとう」その言葉を言われるのは
1年間で今日しかないかもしれない。

まいかはスマホをながめながらそう感じた。

友達や姉から届いたお誕生日おめでとう LINEに、
さっと返信してベッドに横たわる。
今日はまいかの33回目の誕生日。

一人暮らしの部屋で、一人で迎える
お祝いのメールは嬉しいが
心の中は素直に喜んでいない自分がいる。

何か大きな原因がある訳ではない
ただ心の中が満たされていない感覚がある。
私の幸せはどこにあるんだろう。
そんな答えを探す感覚を感じ始めたのは
何歳からだったのだろう。

仕事はやりがいもあるし
頼りにされているとも感じ
居心地は悪くはない。

「誕生日だし」と、普段使わない有給休暇で
8日間の休みをもらった。
そんな突然の休みも 協力してくれる環境だ。

彼と別れたのは1年半前。
結婚も考え⻑くお付き合いしていたが、
互いに仕事が忙しく 2人で過ごす時間は
少なくなっていた。

そんなときに彼の転勤が決まった。
仕事を辞めて彼について行くという選択肢も
あったが、多分そのときにはお互いの気持ちに
溝が出来ていたのだろう。
環境を変えて彼に飛び込む勇気や決断には
つながらなかった。 物理的な距離と共に、
私たちの3年間の関係は終わった。

それから、新しい出会いを探してこなかった訳ではないが、
仕事が忙しい事を言い訳にしながら
人と本気でつながる事を避けてきた。

そんな1年半の時間だった。
「私これからどうなるのだろう。誰かどうしたらいいか教えて...。」 と、大きく深呼吸した。

窓から暖かく優しい風が吹き、
レースのカーテンを揺らす。

ふと窓に目を向けると、キラキラ入ってくる
太陽の光が、揺れるレースのカーテンにうつり「キレイ...」とつぶやいた。
「そうか、今日は良い天気だ。
 お出かけでもしてみようかな。」
まいかはベッドから起き上 がり、
体を動かし始めた。

その時「ピンポーン」と
玄関のチャイムが鳴る。モニターで確認すると
配達員さんが立っていた。
「私何か注文したっけ?」
と思いながら玄関で荷物を受け取る。
両手で持てるサイズの箱を抱えて部屋に戻ると、差出人には懐かしい名前。

「さき からだ!」
そこには幼馴染の親友の名前が書いてあった。
さきとは、何かあると LINE はするが、
この3年間仕事も忙しくて帰る機会がなく
3年以上 直接会っていない。
それまでは年に数回は地元に帰っていたし、
家族ぐるみで遊んだりする仲だった。

さきが2年前に子供を産んでからは
忙しいだろうな。と多少気を遣って自分から
メッセージする事も少なくなっていた。
SNS でつながっているから、それぞれの近況は 見ているし楽しそうに子育てしている様子は感じていた。

突然さきから届いた箱を
ドキドキした気持ちで開けた。

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