奈良屋のデュエット官能随筆 “女が雑誌を読めば”
作/奈良あひる
シャッターの音がする。私はそんな予定ではなかったが、もうブラははずされていて、下に一枚の姿であった。
男「ちょっとさわるよ?」
女「はい」
私は目を閉じている。
彼のなすがままにされるために、こちらの視覚の情報はなくてもいいかなと思ったから。
考える前に言葉が出ていて、男はうつぶせに寝ている私のお尻とパンティの位置を整えた。
「カチッ、カチッ、カシャ」
デジカメで写真を撮り、いいポジションが見つかるとフィルムで撮るみたい。
私が代々木池のほとりのベンチで雑誌を読んでいるときに、写真を撮らせてほしいと声をかけてきた。
あのとき、雑誌を読んでいて。
男は芸術学部の写真学科の学生であり、卒業製作の真っ只中だとか。
後日、男からLineで写真のデータが送られてくる。ベンチに座っているところ。町を歩いているところ。珈琲を飲んで笑っていることろ。ブラもはずされた背中。男が整えたお尻。
そこまでしか写真は送られてこなかった。あれ…、そのあとパンティも脱がされたのに。そして横向きに寝かされ、胸の形もあれこれ整えていたのに。
そうだ、そのあと男は我慢できなくなり…、結局最後までしてしまった。それで、写真はそこまでしかない。
私もそれでいいと思っていた。
次会った時は、写真は1枚も撮らなかった。
つづく
田中屋の少年雑記にも、寄稿しています。
よろしくね
短篇小説というカテゴリーからいけます。
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