奈良屋の官能随筆 「必要悪って?」作/奈良あひる
男の声「必要悪ってどんなことだ?」
女の声「まぁ、世の中にはあるような気がするわね、使ったことない言葉だけど」
社会で生き抜くのは大変だ。
=登場人物=
雛代 31才 結婚1年目 趣味は考え中
男 28才
雛代は、「必要悪」を検索してみた。
つらつらとスマホの画面をスクロールしていく。
検索はしてみたものの、それの意味を知りたいわけでもなかった。
ただ、なんとなくだった。
1ページ目が終わり「もっとみる」へ行ってみた。
すると、Twitterの投稿が出てきた。
「それって必要悪だよね」というつぶやきだった。
雛代は妙に気になってしまって、それをクリックしてみた。
それには、うつ伏せにネタ女の写真が貼ってあった。
髪は自分と同じぐらいの長さで、下着はつけていなかった。
鼓動が走り、雛代はからだの芯に熱を帯び始めていることを感じた。
雛代は、なんとなく以前使ったアカウントで入っていた。
その人の投稿を見た。
男のTwitter「今日は人妻さんにお会いしました。旦那さんとセックスが気まずくならないために、連絡をくれたとのこと。必要悪ってあるんですね。写真は事後」
次の投稿は
ラブホテルの鏡の前にふたりでたってるところ。男の手は女の胸に当てている。
次は
キスをしながら服をぬがす。
そして、揺れる胸
きれい
雛代は、メッセージを送った。送っていた。
自然に返信が来た。
自然にまた、送った。
もう自然でいいと想った。考えない。
私は今その男に抱かれている。
燃えた。
私じゃないみたい。
明日に希望をもてる。
明日もやっていける。
セックス。
その男とのセックス。
何度も達してしまった。今日はじめてあって、はじめて…
必要悪
ネットで調べるよりもずっとリアルな必要悪。
言葉はいらない。
私の写真や動画もアップされた。私ってこんな感じなんだ。
服を着る前に、鏡の前でキスをしながら撮った写真は私の証。
リツイート…
おしまい
ブログ番組「田中屋の少年雑記」の短編小説コーナーにも寄稿しています。よろしくね。