効率よりも優しさを優先しよう。
本当は人に優しくしたい。
でもそれが出来ない環境がある。
それなら優しくいられる環境を作ろう。
これが組織を作る上で僕が一番大切にしている価値観です。
この価値観が正しいかどうかは、分かりません。性善説や性悪説、さらには性弱説など、いろんな価値観があると思います。その中で僕は「人は本来優しい」と考え、「環境」さえ作ることが出来れば「人は優しくいられる」と考えています。
このnoteでは「人に優しい会社」を目指すのではなく、環境要因として「人に優しくいられる会社」を目指してきた僕らの話を書かせていただきます。
「優しくいられる環境作り」が生み出した価値
そもそも優しくいられる環境づくりにビジネスにおける価値があるのか。前提の問いに応えるために、僕が所属するていねい通販について少し話をさせてください。
ていねい通販は、サプリメントと化粧品のD2C企業です。企業の強みは、顧客とのエンゲージメントの高さです。主力商品のサブスク会員は16万人に達し、月次継続率は94%を超えています。これは同業界でも驚かれる数字です。また社員のエンゲージメントも高く、新卒社員の入社後3年以内の離職率はたった4%です。(ちなみに、厚生労働省の調査では2021年の3年以内の平均離職率は32.8%だそう)第三者機関の評価としても昨年「JAPAN EC 大賞2020」の人材活躍部門(社員がイキイキしている会社は?というフリーアンサーの質問に一番票が集まった企業)で、私たちていねい通販が最優秀賞を受賞しました。これらの結果を出せている理由は、社員みんなで貫いてきたことがあるからです。それがタイトルにもある「効率よりも優しさを優先しよう」という経営方針です。
この「優しさを優先させる」という言葉にも「優しさがそもそも人に宿っている」というニュアンスが実は含まれています。ただ成果を追いかけている間に、いつのまにか優しさの優先順位が下がってしまう。それがビジネスの現場で起きている実態ではないでしょうか。つまり優しさよりも優先されてしまうもの、それらを取っ払うことで僕たちは優しくいられるのだと思うのです。
"売上目標"を持たない
人への優しさよりも優先されてしまう代表格。それが売上目標と言えるでしょう。なぜなら、売上目標を達成しようとするあまり、相手にメリットのない行動をしかねないからです。お客様が喜んでくれるなら時に売上が下がる選択が出来ること。それが僕らの強みである顧客や社員とのエンゲージメントを伸ばしてきた要因だと思います。
売上を追わないからこそ決断できたことがあります。例えば、マーケティング施策の実行判断についてです。私たちのような会社では30分の通販番組と呼ばれるテレビCMによって視聴者から注文を直接受けることがよくあります。(ジャパネットたかたさんのCMがイメージしやすいかと思います)そのテレビCMを流すタイミングは、出来るだけ視聴率が高くなりやすい日や時間帯を選びます。普段はもちろん私たちも費用対効果の良い枠を選びますが、売上目標がないからこそ、それを選ばないことが年に一度あります。それが年末年始です。会社としては、自分たちに関わる社員やビジネスパートナーには、年末年始はしっかり休んで欲しいという思いで一切放送しません。もちろんオンラインに関しても注文は受付していますが、特別なプロモーションはせず問い合わせが生まれないようにしています。このように売上よりも大切なことがあるという大前提を置くことで、決断が変わるのです。(ちなみに年末年始にCMしていること自体が優しくないとは思っていません。僕たちの組織体制で実施すると社員やビジネスパートナーへの負担が大きすぎるためです)
マニュアル無し、予算も無し。
売上と並ぶほど、優しさよりも優先されやすいもの。それは「枠」です。
枠(わく)・・・物事の範囲を決めるために設けられた仕切りのこと。
物事の範囲が決められていることで、優しさが後回しにされてしまうケースがあります。その枠の代表が「マニュアル」と「予算」です。マニュアルや予算によって、顧客の要望に応えることができない。マニュアルや予算によって、やってあげたいことができない。そんな経験が思い当たる人は多いかと思います。むしろ一消費者としても窓口対応に対して「なんでそうなるの?」という経験があるのではないでしょうか。
ていねい通販では、マニュアルも予算もないため社員だけではなく、アルバイトスタッフも含めてお客様に全力を尽くすシーンが毎日のように起きます。今日もサブスク契約解約でお電話いただいたお客様と1時間近くも世間話をしているスタッフがいたり、お客様の娘さんの誕生日が近いことを聞いて折り紙でかわいい動物を作って発送していたり、マニュアルや予算が決められていないからこそ全力でお客様に喜んでいただけるように動いてくれています。決まった枠組みがないことで1人1人に寄り添ったサービスが出来ているわけです。
自分で言うだけだと嘘くさいので、SNSにあるていねい通販に対する嬉しい声を載せさせていただきます👇(自慢に付き合ってください🙇♂️)
優しさを後押しする言葉のアクセル。
長い間、優しさを優先させてきた僕たちだから分かることがあります。それは「分かってはいても出来ない」ということです。「こんな風にしたら喜んでくれそう」や「これは無くしても良いなぁ」と思い浮かべることは出来ても、最後のアクションに繋がらないことは多々あります。そのため、私たちはその思いの実行を後押しする言葉を共有しあっています。
例えば「身近な人から大切に」という言葉です。これは、仕事の上で大切にする順番を明確にしています。簡単に説明すると、「まずは家族や大切なパートナーを大事にしましょう。次に、一緒に働く社員を大切にしましょう、次に、ビジネスパートナーを大事にしましょう。最後にお客様に寄り添いましょう。」ということです。いわゆるお客様第一主義の逆をいく発想です。(勘違いして欲しくないのは、これが結果としてお客様にとっても一番良いサービスを生み出すことに繋がると考えているということです)
例えば、自分の家族や大切な人が体調不良だった時に、会社に迷惑をかけてはいけないと思って出社しようとすることはあるかと思います。(もちろん会社が強制しているつもりがなくてもそう判断しがちです。)ただ上司から「僕たちの会社は身近な人から大切にするんだよ。会社の理念を守るために休んで欲しい」と言われたら、後ろめたさがなく休むことを選べたりするのではないでしょうか。(この言葉が誕生してから、家族だけではなく、ペットの看病で休む社員もいてどこか誇らしい気持ちに僕はなりました。)
他にも「一円でも高くではなく、一人でも多くではなく、1日でも長いお付き合いを目指す」という言葉があります。これは売上や新規獲得を目指すよりも今いるお客様との関係を深めることを優先させようという意味です。この言葉のおかげで、例えば新規顧客獲得の結果が良くなるからといって過度な安売りをしないという意思決定ができます。なぜなら商品を使い続けてくださっているお客様が不快な気持ちになり得るからです。こういった決断を促す共通言語によって僕たちは優しさを優先できているように思います。
優しいは、気持ちいい。
正直、僕たちのやり方はビジネスを短期間で大きくスケールさせる方法ではありません。ただ、長期的に愛し愛される関係を築くことは確かだと思います。それは、お客様との関係だけではなく、ていねい通販で働く仲間や関わるビジネスパートナーとの関係も含まれます。そして、そんな風に良い関係を築くことのメリットは、リピート率という形で売上や利益に返ってくることもあるのですが、一番は「やりがい」です。全力で、お客様や仲間に尽くすことが出来ることは、相手が喜んでくれる以上に自分たちが嬉しいのです。
そしてこの「やりがい」こそが仕事をする上で、最後のもうひと踏ん張りを生み出したり、プロダクトやサービスへの細部へのこだわりを生むのかもしれません。先日も新商品のパッケージの素材を何度も何度も試作を重ね、どれが一番ユーザーにとって心地よい商品になるかの結論を出している社員がいました。きっとこういう積み重ねがあるから顧客に届くと思いますし、届いた時になんとも言えない喜びを感じる訳です。
選択肢を増やしたい
こういうnoteを書いていると自分たちがすごいとか他の人がダメみたいに聞こえちゃうかもしれませんが、全く違います。あくまで選択肢の問題です。僕たちは、この価値観で生きることで、やりがいを持って、幸せに働くことができています。そして、自分たちの周りの人たちを少しばかりかもしれないけれど、幸せに出来たと実感しています。だから売上を最優先に追うのではなく、こういう選択をすることも企業や組織の一つの選択肢として良いのではないかと思って書かせていただきました。
さいごに
僕自身もまだまだ勉強中です。だからこそこうやって言葉にすることで、自分の思考を深めて行こうと思っています。そして、それが他の方にとって、小さなGIVEになることも願っています。今後もこのnoteを皮切りに僕が普段の社会との関わりの中で感じたことや、働く上での学びなどを共有し、「優しくいられる会社」を選択肢の一つとして提示し続けられたらと思います。
今後noteを書く糧にもなるので、もし少しでも「いいな」と思ってくださったらイイネしてくだされば嬉しいです。それでは、また。