見出し画像

赤色とシャボン玉

幼き頃、夏の日。
小学校に入る前の年。

私はシャボン玉が大好きだった。
キラキラしていて、ふわふわ浮かび、どこまでも飛んでいきそうな感じが、私をどこかへ連れて行ってくれそうだから。
そんなところが好きだった。
だからあの日も、シャボン玉を吹いては追いかける。
その繰り返しを楽しんでいた。

そのときにふと、自分以外の、それも自分が作るよりも大きなシャボン玉があることに気がついた。

(わぁ!誰が作ったんだろう!!すごい!!)
(きっと私みたいにシャボン玉が好きな子がいるに違いない!!)

そんな無垢な衝動に駆られて、大きなシャボン玉の飛んでくる路地の方へと歩みを進めていた。
当時、近所に子供がおらず遊ぶ友達がいなかった私は、一緒に遊べる子が、同じものを同じくらい楽しめる子がずっと欲しかったのだ。
期待に足を進めるほどシャボン玉は数を増していった。

(近づいてる!)

シャボン玉の主に会えるワクワクと、目の前のシャボン玉に集中しすぎて、私は仄かに漂う生臭さに気付かなかった
……いや、多分気付いて気にしないフリをしていたのだと思う。
駆け足気味に辿り着いた路地の先。
目にしたのは横たわる人間と、それに触れて弾けたシャボン玉だった。

呆然と立ち尽くしていると、シャボン玉が少なくなっていることに気づく。
そういえばこれは、誰がどこから飛ばしているの?
どうしても気になってしまい、現実から目をそらすようにあたりを見回し、上を見たとき、何かが落ちてきて横たわっていた人間にぶつかった。
それは液体の洗剤容器のようだった。
落下の衝撃で容器が割れて、足下に液体が流れてきた。
その液体に赤色が混ざり、ようやくそこにある人間が、死んでいることを、認識した。
めまいがして、その後の記憶は残っていない。
私は シャボン玉が嫌いになった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

シャボン玉✕死体でトラウマな物語を描きたかった残骸をギリギリ読める文章にしました。
設定にだいぶ無理があります。

いいなと思ったら応援しよう!