MQL5シグナルを使ったポートフォリオ運用を考えてみる

MQL5ではシグナルという、他人の取引をコピーすることができる機能が提供されている(シグナルについては以下で解説している)。

今回はこのMQL5のシグナルを使って、破産なども考慮した上でのポートフォリオ運用ができないか考えてみようと思う。

シグナル

まず、MQL5のシグナルの特性を整理し、その後にポートフォリオ運用をするメリットとデメリットを考えていく。

MQL5のシグナルとは、個人が取引口座の取引操作をコピーできるように設定したシグナルプロバイダーによって配信されるコピー取引の機能となっている。配信されたシグナルにはその成績が表示されるため、それを見た人々がそのシグナルを月額料金で購買することによってシグナルプロバイダーに利益が渡るようになっている。

高い利率

まずシグナルの特性として上がるのが、高い利率だと思う。
シグナルは後述する信頼性に欠けるという代償があるかわりに、一般的な低リスクの投資商品よりも非常に高いリターンを期待できる。

MQL5のシグナルの一覧ページをみると、2, 3年で数百%から数千%のリターンのあるシグナルもざらにある。リスクの低い金融商品であれば年利が10%未満のものも多くあるため、その数十から数百倍のリターンを見込める。

MQL5のシグナル一覧ページ。

信頼性に欠ける

上記のようにシグナルは金利が非常に高い反面、信頼性に欠けるという大きなデメリットも存在する。個人でも容易にシグナルプロバイダーとして配信ができるため、素性が明らかでなく急に暴挙に走って大きな損失を出すことも十分にありえる。

例として、以下の記事で取り上げている「Seikou」というシグナルでは、1年半程度は安定して利益を上げているのにも関わらず、急に取引スタイルが変化して破産している。

もともと複数の国の会社へ分散投資をしている投資信託などであれば破産をする可能性はそこまで考えなくてもよいが、このシグナルへの投資は現実的に破産がありえるためそれを考慮した運用方法がとても重要になってくる。

月額料金

もう一つシグナルの特徴として、料金形態が月額の固定料になっていることが挙げられる。投資信託の信託報酬のように利益の一部が料金になるような形態ではないため、シグナルに投資する資金が少ないと利益分が月額料金よりも低くなる可能性がある。
これがちょっとめんどくさくて、決められた軍資金を複数のシグナルに分散して投資する際に、分散すればするほど月額料金が嵩んでいくためより利率の高いシグナルを選ばざるを得なくなる(利率が高いとおそらくリスクも高い)。

ポートフォリオ運用

定義

ポートフォリオ運用とは、特定の銘柄に絞ることなく、セクターをはじめとした性格の異なった銘柄へ投資することで安定した収益を目指す運用方法のことです。 マーケットの環境や特定の銘柄の株価や価額に左右されることをできるだけ避ける運用のため、機関投資家にとっては必須の運用方法となります。

https://www.tokaitokyo.co.jp/kantan/term/detail_0249.htmlより引用

上記の定義の通り、ポートフォリオ運用は特定のマーケットなどに左右されずに安定的に利益を得ることを目的とした運用方法となっている。株であれば国や会社の業界などを分けることで、特定の業界に打撃のある出来事が起きたとしてもそのリスクを抑えることができる(もちろん特定の業界が大きく成長しても、ポートフォリオ全体の成長幅は小さくなる)。

リスクを分散するという投資の基本ともなる考え方だ。

シグナルとの相性

シグナルに投資することは、前述の通りリターンは非常に大きいがその分リスクも大きい。このリスクは以下に分けられると思う。

  1. 銘柄によるリスク

  2. 手法によるリスク

  3. その他(シグナルプロバイダーの故意など)

1の「銘柄によるリスク」は、特定の銘柄が普段と異なる予想しづらい動きをした際に、手法に関わらずその銘柄を取引するシグナルが軒並み成績を出せなくなるリスクだ。
2の「手法によるリスク」は、特定の取引スタイル(スキャルピング、デイトレなど)のシグナルや、特定のインジケータ(RSI、MACDなど)を使うシグナルが軒並み成績が出なくなるリスクだ。
3に関しては、シグナルプロバイダーの取引スタイルが急に変わったり、故意に損失を出すような動きをしたりするものを想定している。

上記を考えると、単一のシグナルではなく、特性(銘柄や手法)がなるべくバラけた複数のシグナルに投資することでよりリスクを抑えることができるとわかる。

シミュレーション

では、シグナルとポートフォリオ運用について整理できたところで、実際にシグナル単体で運用する場合とポートフォリオ運用する場合の期待収益を考えてみる。シミュレーションはPythonでさくっと実装する。

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