妊娠出産の地位向上のために
子どもがどうやってできるのか…そんなことは頭でわかっていたし、不妊になる人がいるということも頭でわかっていた…
そして何故か自分は普通に子どもができるのだと簡単に考えていた。相手さえいれば。
普通に結婚した後に思ったよりも早く妊娠した。妊娠する、それが当たり前だと思ってたから、妊娠できたことに何も感じずに、そのままママになるのかなって理想的なことしか頭になかった。そして、当たり前のように何も考えずに頭の中お花畑のまま妊婦健診を受けていたら、赤ちゃんが育っていないと言われた。
医療職についていたので妊娠についての知識はあった。でも、まさか自分が流産するとは全く思ってなかった。流産した人の治療をすることは頭の中にあったけど、流産する自分は頭の中になかった。
癌のような治らない病気になったらどうしようという不安はあったのに、流産したらどうしようという不安はなかった。
何故なのか、後になって考えてみたけれど、妊娠は病気じゃないという、あの世間一般で言われていることを鵜呑みにしてたせいだと思う。
病気は命を落とすかもしれない怖いもの。だけど妊娠は病気じゃないし、みんなが普通にしてること。
そんな感じのイメージだったんだろうな…妊娠出産で命を落とす人がいることは、もちろん知っていたけれど、特別な人がなるもので身近に感じていなかった。「病気じゃない」この6文字はかなり多くの人に同じような印象を与えているのではないか。
医療の仕事をしている自分がこの程度だったことを考えると、世の中では妊娠出産はそれ以上に簡単に思われているのかもしれない…という思いが出てきた。そして、そのせいで妊婦や赤ちゃん連れは大切にされていないのではないか。だって本当に大変なことをしているという世間の認識があれば、もっと大切にされている気がする。育児が大変だというよりも、世間にわかってもらえていないことがとても辛い。妊娠も当たり前だと思われるとやはり辛い。
だから妊娠は病気じゃないっていう、この言い方は何か別の言い方に変えたほうが良い。しかも国を挙げて大々的に人々の意識を変えるくらい力を入れたほうが良い。
妊娠は病気以上に大変。とか、それくらい大げさに言ってもいいかもしれない。実際には、病気はただの風邪でも結構大変だから、やっぱり病気は病気で大変なものなんだけれど、人々の意識を変えるにはそれくらいしないと、いつまで経っても「たかが妊娠出産」という認識した持ってもらえない。出産経験があると多少は辛さをわかっていると思うけど、中にはたまたま超健康でなーんにも苦労せずに、順調に産み終えてる人もいて、そういう人に限って妊娠なんて大したことない。とか言うので、やはり男女共に意識を変えたほうがいいと思う。
妊娠や出産は普通ではない。たくさんの偶然と、なんか神さまみたいな力と、そして妊娠している女性の苦労で成り立っている。無事に出産できることは真の奇跡。奇跡とか使われ過ぎてありがたみなくなってるから、ここも奇跡に代わる新しい語彙を作って欲しいくらい。奇跡よりももっと奇跡に近い感じの、そういう語彙。超奇跡。みたいなそういうの。
で、その超奇跡は命が誕生するっていう特別な時にしか使えないものにする。そうすれば多少はイメージが変わってくると思う。
言い方変えるだけなら、誰にも迷惑かけずに出来そうな気がするんだけどな…
ともかく妊娠出産の特別感をもっと出したほうが良い。そうじゃなきゃ、苦労して産んでもバカみたいって思えてくる。自分が苦労してるのに、世の中にその苦労わかってもらえないなら産みたくなくなるの当然だよ。少子化だって、こんな世の中だったら当たり前だと思う。