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ロンドンの思い出 その3 ハイドパークの空とワンタンヌードル

「大丈夫ですか」
声をかけてくれた女性はそのB&Bの長期滞在者で、その時間たまたま部屋にいたところを、受付のスタッフさんが泣きじゃくる私を見るに見かねて、連れてきてくれた。
数時間ぶりに聞く日本語は、それまでの私をがんじがらめにしていた緊張感から、ふぁーっと解放してくれるようだった。

今更ながら・・・英会話もろくすっぽ出来ず、なんとかなるなんて無計画で無謀な行動をしてしまった自分を、心の底から恥じて後悔した。ヨーロッパに行きたい、気ままな旅がしたい、それまでの自分を恥じた。
彼女は(うる憶えの名前、陽子さんだったか・・・)私より5、6歳くらい上の宮城県出身で(なぜか出身地は憶えている)大泣きの私の、これまでの経緯を聞いてくれた。
陽子さんはすぐに友人と連絡をとり、私たち3人で遅い昼食をとることになった。

ソーホーのチャイナタウン
決して綺麗とは言い難い店構えだったけど、ここで食べた「ワンタンヌードル」は、本当においしかった。スープもワンタンも。ただ、麺が日本のそれとは全く違った。
ゴム・・・そう、ゴムみたいな食感、太さも。でもこれがまたイケる。うまい、うまい、うまい。

気持ちが徐々に落ち着いてきて、2人に自己紹介をした。名前、年齢、仕事先、出身地、ここにきた理由、などなど。

陽子さんの友人は私より10歳くらい年上の日本人女性で、奈良県の出身(名前を完全に忘れた、またなぜか出身地だけ覚えている。以降、奈子さんと呼ぼう)でご主人はイギリス人、4歳の女の子がいるという。ロンドン在住。日本食レストランに勤めている。
奈子さんのアパートの隣の部屋が空いているとのことで、そこに滞在できるよう、すでに手配をしてくれていた。

7月のロンドンは気候がとても良くて、滞在中1日も雨に降られることはなかった。日の入りも遅く、だから日照時間も長い。この日は快晴で、気持ちが落ち着いてようやく空気が心地よく感じた。

奈子さんのアパートに行く途中、ハイドパークに寄った。
広い広い芝生にみんなで腰をおろした。
綺麗に整備された芝生に寝ころぶ。背中に芝がチクチク。目の前は青い空。
ここはロンドンか?・・・何をいまさら・・・ロンドンに来た。

2人の女性に助けられ、ハイドパークの青い空とワンタンヌードルに出会えた。

次回に続く

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