高さを変えれる目
彼の名前は目頭。彼は特別な能力を持っていた。その能力は、目の高さを自由に変えられるというものだ。体の範囲内であれば、目はどこにでも移動できる。ただし、目を動かしている間は体を動かせず、目を閉じたまま集中しなければならなかった。目を開けると、予期しないものが見えることがしばしばあった。
目頭は幼少期の頃からこの奇妙な能力に悩まされていた。友達と遊んでいる最中に、目が突然胸の位置に移動し、視界がゆがんでしまうことがあった。それが原因で、友達からは変わり者扱いされることもあった。しかし、彼は次第にこの能力をコントロールし、日常生活に活かす方法を見つけていった。
ある日、目頭は自分の部屋で静かに座り、目の移動を試みることにした。彼は目を頭から胸の位置まで下げ、ゆっくりと目を開けた。そこには、壁にかかった古いポスターが見えた。それは、彼が幼少期に大切にしていたスーパーヒーローのポスターだった。その瞬間、彼の心に懐かしい思い出が蘇り、心が温かくなった。目頭はさらに下げてみることにした。目を腹部の位置に移動し、再び目を開けた。目の前には、自分の手が広がっていた。手のシワや指先の細かな動きが、まるで新しい発見のように鮮明に見えた。彼は、自分自身を新たな視点で観察することの面白さに気づいた。
しかし、この能力には困難もあった。目を胴体に移動させると、服で見えなくなるため、目頭は露出度の高い服を着ることが多かった。これが原因で、周囲から変な目で見られることもあったが、目頭は気にしなかった。彼にとって、この能力は自分自身であり、それを受け入れることが重要だった。
ある日、目頭が公園を散歩しているとき、目をふくらはぎの位置に移動させることにした。目を閉じて集中し、ゆったくりと目を下げていく。ふくらはぎの位置に目を移動させた目頭は、再び目を開けた。視界には、地面に這う虫が映り込んできた。思わず目頭は叫び声をあげてしまった。通りすがりの人々が驚いて振り返り、彼を不思議そうに見つめた。目頭はこの能力を使って、普段見えないものを見ることができる喜びを感じていた。しかし、同時にその能力が彼に与える不便さや驚きも経験していた。
目頭は、この能力を通じて自分の周りの世界を新たな視点で見ることができるようになった。彼の目は、単なる視覚の器官ではなく、彼の心を広げるツールとなったのだった。彼は日常の中で、普通の人々が見過ごしてしまうような小さな美しさや驚きを見つけ出すことができた。それは、目頭にとってかけがえのない宝物となった。目頭は、これからも新しい発見と驚きに満ちた人生を歩んでいくことを誓った。そして、彼の目は、未来へと続く道を見つめていた。