全国遊廓案内ほか(令和遊廓・赤線・青線跡案内02-1;参考文献・戦前刊行分)

遊廓・赤線・青線跡巡りについては、城巡りなどの街歩きをしていて偶然発見、というパターンもあったところですが、基本的には、多くの先達等のネットでの公開情報と併せ、戦前・戦後の各種刊行物を参考に訪問をしています。
ここでは、戦前刊行分の参考文献を掲げますが、基本は、国立国会図書館のデジタルアーカイブ(著作権切れで紙の本を電子化して公開しているもの)です。

日本遊覧社編『全国遊廓案内』(日本遊覧社・1930)
非常に有名な書籍で、高値で古本が取引されていましたが、国会図書館が電子化してくれたおかげで、誰でも一次資料としてアクセスできるようになりました。なお、別会社が復刻・再販しています。
一級品の資料なのですが、この資料については、いくつか気を付ける点があります。それは、案内的に記載されている「交通の便」と「海・川」との位置関係です。
「交通の便」に関しては、戦前と戦後で、鉄道会社名・駅名が変わるくらいですと想像力でなんとかなりますが、鉄道駅の場所そのものが変わる、あるいは線路の場所が変わっているということを知らないと、現地で大変な事態になります。主要道路も、戦後の道路整備で場所が変わってしまっている、というのはよくあるパターンです。
また、「海・川」についても、海の埋め立てや港の整備、河川改修で川の場所がそもそも変わる、というのも、これまたよくある話です。※リンク先は以下を参照。


内務省警保局編『公娼と私娼』(内務省警保局・1931)
こちらは、戦前最強の官庁としていいことも悪いこともやった、内務省の警察部門(今の警察庁)が、全国のネットワークを生かしてまとめた、赤線・青線の実態レポートです。役所の本ですので、多岐にわたる定量的なデータが中心ではあるのですが、定性的な分析を加えた記述にページが結構割かれており、その記述の信頼性では、日本遊覧社編『全国遊廓案内』(日本遊覧社・1930)よりも上、と思われます。このあたり、想像になりますが、刊行時期が、『全国遊廓案内』と『公娼と私娼』で近接してますので、両者に関わっている人物がいそうな気がします。※リンク先は以下を参照。


内務省警保局編『警察統計報告. 第3回』(内務省警保局・1926)
『公娼と私娼』同様、内務省警保局が出している、統計データです。いまでいう「警察白書」のようなものですが、遊廓や娼伎の鑑札が警察扱いだった関係で、各県ごとのこれらの数が載ってます。今では考えられませんが、非常に若い(未成年)の娼伎がいるのには、ビックリです。※リンク先は以下を参照。


酒井潔『日本歓楽郷案内』( 成光館書店(中央公論新社)・ 1931(2014))
『全国遊廓案内』や『公娼と私娼』とほぼ同じ時期に刊行されたもので、中央公論新社から復刻版が文庫本として出てます。
この本は、主要都市の風俗体験・観察記的な内容となっており、地方都市をカバーしていないという難点はあるのですが、部分部分でかなり細かい地理案内の記載があり、丁寧に読むと、意外と役に立ちます。

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