赤線跡を歩く 消えゆく夢の街を訪ねてほか(令和遊廓・赤線・青線跡案内02-2;参考文献・戦後(近年)刊行分)
赤線跡を歩く 消えゆく夢の街を訪ねて(令和遊廓・赤線・青線跡案内02-2;参考文献・戦後(近年)刊行分)として、ここでは実際の遊廓・赤線・青線巡りに役立つものを中心に紹介しましょう。
木村聡『赤線跡を歩く 消えゆく夢の街を訪ねて』(自由国民社・1998)
遊廓・赤線ブームの原点ともいうべき書籍です。著者の木村聡さんも、この分野の第一人者です。ちなみに東京三世社の風俗情報誌、シティプレスでも、おそらく氏がウラ風俗情報と併せ遊廓・赤線情報をコラム記事化していましたが、当然のことながら、途中で連載打ち切り、という事態に(当たり前で、オモテ風俗ともいうべき業種の広告を扱っている雑誌に、商売敵のヤバ目の裏風俗・遊廓・赤線ネタの記事を載せるわけですから)。
ちなみに、筑摩書房から文庫本もでています。
この本の内容は、やや地域に偏りがあり、首都圏中心で、名古屋、関西がぱらぱら、の構成です。
木村聡『消えた赤線放浪記』(筑摩書房・2016)
オリジナルは、ニッチ系出版社のミリオン出版からでしたが、そちらが解散ということで、この本も、筑摩書房で文庫化されました。この本、もとがエロ本も扱っていたミリオン出版の発行ということもあり、エロイ描写はないものの、遊廓・赤線・青線跡の風俗街体験記がメインとなっており、『赤線跡を歩く 消えゆく夢の街を訪ねて』とは趣を異にしています。
全国裏フーゾクの本(西野文蔵ほか、双葉社、1998)
エキサイティング沖縄(文野石平ほか、バウハウス、2002)
遊廓・赤線・青線跡は現役の風俗街になっているケースが多いのですが、現在と遊廓・赤線廃止との中間地点の状況で、風営法上の性風俗業に転業しなかったエリアの姿を、ある意味、記述しているのが、これらの本で、遊廓・赤線・青線跡の地理案内書として使えます。
東南アジア男のひとり旅(庄子利男、KKベストセラーズ、1990)
30年以上前の、東南アジア買春旅ガイドといったテイストの本で、もちろん情報が古すぎて、その向きでの利用については、今では使い物になりませんが、この本の「台湾」の記述が、台北の赤線フィールドワークの参考になったところで、戦前からちょっと前まで続いていた「赤線」の場所の特定に繋がりました。
飛田残月(黒岩重吾、筑摩書房、2020)、沖縄と私と娼婦(佐木隆三、筑摩書房、2019)
この2作は、ルポルタージュ的な作品で、前者は1980年に、後者は1970年にそれぞれ出版されたものが、近年、筑摩書房から文庫化・出版されたものです。
前者は当然、大阪飛田を、後者は沖縄全般ではありますが、十貫瀬やコザが結構、細かく書かれています。
いずれも、著名な作家の実体験をベースにしたもので、書かれた当時の雰囲気が体感できます。
新版「昭和二十年」東京地図(西井和夫・平嶋彰彦、筑摩書房、1992)、東京十二契(野坂昭如、文芸春秋社、1987)
意外とありそうでないのが、東京の遊廓・赤線・青線に関する情報のある本ですが、この2冊は、その数少ない本。
この本では、街の状況が大きく変わっていくテンポが速い、東京の遊廓、赤線、青線跡のオリジナルの情報がちらほらと載っており、特に、前者についてはバブルの地上げ前に、ギリギリで残っていた旧遊廓・赤線系の建物の画像が掲載されており、非常に興味深い内容です。
そこのみにて光輝く(佐藤泰志、河出書房新社、2011)、町の地図(女たち(高橋治、文芸春秋社、1996)所収)
遊廓・赤線(周辺)育ちの人による、遊廓・赤線関連の作品というのももちろんあるのですが、一般に、遊廓・赤線が美化されていたりして、客観的な記述になっていない場合が多いと個人的には感じているところで、それとは対極的に、ちゃんとした作家の作品で、地方の遊廓・赤線・青線が取り上げられているのが、この二作品。
前者は、函館育ちの作家によって若松のセキセンが、後者は千葉育ちの作家により千葉遊廓が、それぞれ登場します。
前者については綾野剛さん主演で映画となってますが、ヒロイン役の池脇千鶴さんが、売春スナックで働いているシーンは五稜郭でロケをやっていますが、原作、そして史実と異なります(デリヘル嬢として派遣されたホテルは、セキセンの近くでしたw)。