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#27 武田味噌
こんにちは。
be-en 代表のゆうかです。
蔵元巡り第27弾は長野県上田市にある武田味噌さんを訪問しました。今回は、武田晴太郎さんからお話を伺わせていただきました。
武田味噌の略歴
武田味噌は昭和5年創業、93年の歴史があります。
かつて、上田市では養蚕が盛んだったことから、武田味噌の前身は製糸業でした。当時、海外にも絹を輸出していたそうです。
しかし、1930年の世界恐慌により養蚕業は衰退し、それを機に転業、武田味噌を創業されたとのことです。武田家は武田信玄の次男・武田劉邦の家系で、軍糧として味噌を使用していたのだとか。
創業当時、武田家は大地主で、武田家から土地を借りている農民から農地の使用料として納められる小作米を使って糀を作っていたとのことですが、戦後の農地解放により、ほとんどの農地を失ってしまったそうです。
「原料に勝る技術なし」 ー武田味噌のこだわりー
武田味噌では、どんな技術や手法でも原料選びをおろそかにすればすべてが無駄になってしまう、という考えの下、味噌に使用する原材料にとことんこだわっています。
味噌に使用する原料は、職人が一つ一つ吟味して選んでいるそうです。ここでは、武田味噌が特にこだわっている大豆についてご紹介します。
7年かけて見つけた理想の大豆
「科学的な視点から自然に近づける」を理念に掲げる、北海道の大豆農家の大豆を使用しています。
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仕入先の農家では、毎年秋にアメリカの分析機関へ土壌サンプルを送り、土壌に成分に合わせて足りない栄養素のみ補っているほか、栽培方法も工夫されています。
例えば、通常は土に穴を開けて大豆の種を播きますが、北海道の大豆農家では一度種を播き、その上から土を被せることで、芽の出るタイミングが同じになり、生育速度を合わせているそうです。成長すると葉が密集するため、雨粒が直接土に落ちることなく、泥はねによる感染を防止できるそうです。
また、土壌が肥沃になりすぎることを防ぐために、土壌成分を調整することで根が土壌深くまで張られ、丈の低い大豆が育ちます。丈が低いことで強風でも倒れにくく、安定供給を可能にすることができるという工夫をされているそうです。
収穫した大豆は、北海道の とあるJA で厳しく精製されるそうです。石や枝、そばなどの種子といった遺物を綺麗に除去することができ、アレルギー物質の混入防止の観点でも安全とのこと。味噌にした時に黒くなってしまう紫斑病の豆も除去しているそうです。
他にも米や塩等の原料調達のお話の詳細を聞かせていただき、武田味噌さんのお客様へ「安全で品質の良いお味噌を届けたい」という想いを強く感じました。
業界初の試み
武田味噌の看板商品の一つに「銘醸」というお味噌があります。
銘醸のパッケージには、生産者である農家への敬意を表して、栽培契約を結んでいる大豆とお米の生産者を明記しています。
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農家と栽培契約を結び、商品のパッケージに生産者を明記する試みは業界初の試みだったそうです。また、原料に加えて、味噌の味も業界にとって画期的ということですが、それは食べてからのお楽しみ!
是非、皆様に実際に召し上がっていただきたいです!!
新設の小規模工場
一通りお話を伺った後、1年前に新設された小規模工場を見学させていただきました。小規模スケールで試作を行なっているそうです。
特に印象的だったのが、新設した麹室です。
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蒸し米にコウジカビを繁殖させる目的で使用される麹室ですが、これまで見学したどの麹室も古くから受け継がれた年代物が多く、ここまで新しく木材の香りの強い麹室は初めてでした。
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この新設した麹室では、60-200kg の麹を製造できるそうで、様々な麹作りを試していらっしゃるとのことでした。とても研究熱心な晴太郎さん。現在は玄米麹作りに挑戦されています。玄米麹は固く麹菌が生えいくいため、武田味噌さんでも、いちぶづき(1割だけ精白)にして麹を作っているそうです。また、玄米は栄養価が高いため、麹の生育速度が速く、温度が急上昇してしまうという課題があるそうです。
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また、工場内では通気設備を完備し、湿度の高い作業場でカビの繁殖を抑えていらっしゃいます。ここでも衛生環境の整備を徹底し、安心安全な味噌作りへの熱意が感じられました。
子供達にもっと味噌を食べてほしい。味噌の健康効果を知ってほしいと語る武田さんに共感を覚え、若者にむけた味噌の製品開発を一緒に行いたく、是非お声がけしたいと思っています!
また、11月11日と12日実施予定の発酵ツーリズムでのご訪問も、快く引き受けてくださいました。これからお味噌の魅力発信を協働で行えること、大変有り難く思っています。
親切かつ丁寧にご対応いただいた晴太郎さんに心より感謝申し上げます。
それではまた次の記事でお会いしましょう。
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