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ちょっと待って、春

今日は七十二候で、「桜始開(さくらはじめてひらく)」というらしい。その名のとおり、桜の花が開き始める頃だ。


このところ暖房をつけない時間が増えてきているし、近所の桜はもう満開。青空にうすいピンクがよく映えている。暖かさの指標である「ヒートテック着ないチャレンジ」も2日ほど成功している。

重かったコートを脱ぎ捨て、新しいパンプスでるんるんスキップしたくなるような時期に、でも私はちょっと待って、と焦ってしまう。

春の準備、してない。新しくなる用意、できてない。


新生活、新入生、新しい私、目標、デビュー、やりたいこと。

桜前線と共に、そんなキラキラ眩しい言葉達がやってくる。

誤解のないように言っておくが、新しいものが嫌いなわけじゃない。新品の本の匂いも、おろしたてのスカートも、好きだ。背筋が伸びる。

でもそれは、自分で「始めよう」と思って始められるからだ。

春は、突然やってくる。

街に出るとみんな薄手のトレンチコートを着ていて、どこもかしこもお花見のニュース、そして手にはスタバの桜ラテ。いつのまにかみんな「春」を満喫しているのに、私はまだスタートラインに立てていない。

冬の間閉じこもっていた巣穴からのそのそ起き出して、暖かな空気を吸って、ぐいーっと背伸びをして、そしてやっと思う。「そろそろ起きるかあ」と。


なのでどうか、春、ちょっと待ってほしい。ゆっくりゆっくり、始まってほしい。

レジ横の花見団子を買って、のんびり桜を眺めて「さぁこれからどうしようかな」と考える時間が必要な奴も、ここにはいるんです。


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箱崎ゆのまる
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