仮面の忍者 青影、村上龍、志村けん に聞いてみたい
コトバは生きているので、その時代によって意味が拡張されたり、変わったりする。
今普通に使われているコトバでも、その元々の語源を聞くと「へぇー」となるコトバはたくさんある。ということは、逆に昔の人に、今はこんな意味で使われていると教えたら、どう反応されるか。
最近、巷で多用されていて、気になっているコトバがあるのだが、
広辞苑では、
①立派な男子
②しっかりしているさま。ごく堅固なさま。あぶなげのないさま。
③間違いなく。たしかに。
大辞林では、
①(名)立派な男子
②(形動)危険や心配のないさま。まちがいがないさま。
きわめて丈夫であるさま。非常にしっかりしているさま。
③(副)まちがいなく。たしかに。きっと。
と説明されている単語だ。
ファミレスで「飲み物XXXですか?」
コンビニでは、「袋はXXXですか?」
XXXの部分に①、②、③のいずれも当てはめても意味が通じない。
別の意味、「不要」「要らない」の意味で使われているからで、近い将来、新しい④つめの説明として、広辞苑にも載るであろう。
このような意味で使われるようになった背景は、日常的に決まり文句のように交わされる会話が煩わしく、極力短く済ませる目的から、単語や話すコトバが省略されてしまっているのだ。
出先から帰った際に使う「ただいま」もこの類。
「袋はご用意しなくても大丈夫ですか?」さらには「有料のレジ袋をご用意しないでも良いという理解で間違いないでしょうか?」などといちいち聞いていてはお互い煩わしいし、レジに行列ができてしまう。
誰かがこのように短縮・省略しますと、宣言したわけでも無く、どこからともなく、日々の不特定者とのコミュニケーションから自然に生まれた用法であるが、直ぐに社会に認知されていく。
当初、違和感を覚えることはあっても「だいじょうぶ」。
上記で場面説明に使った、ファミレスやコンビニについても、「短縮・省略」である。
こちらは、「会話」の短縮・省略ではなく、「単語」の短縮・省略であるが。
「ファミレス」については、ファミリー+レストラン という造語の省略形であるが、部分的に切り取られた短縮後になる。
一方「コンビニ」は、コンビニエンス+ストア という造語の省略であるが、ストアという本来その新造語が主体的に表す単語の方が省略されてしまい、意味を補てんする役割であった単語のみが独り立ちしてしまっている。しかもその単語自体が短縮されてしまっているケースだ。生活に密着していて、利用頻度も高いこともあり、直ぐに認知されている。
「スーパー」、「デパート」しかり。
「ケータイ」も補助的な単語の方が残ってしまった例だが、その方が人々に馴染み、市民権を得ている。
意味を補足するために用いられた単語の方が生き残ってしまうのは、新たにできた造語にとっては、元々の単語との差別化が必要であったわけであって、それが短縮される段階で、元々の単語と区別できない状態になってしまったら、新たな造語のアイデンティティが無くなってしまうからだろう。
そう考えたら、許せてきた。
ただ、昨今、コンビニの店員は殆どが外国人だが、「大丈夫」という単語の「不要」という以外の意味をきちんと知っているだろうか。
仮面の忍者赤影にでてくる 青影 のお得意の決めゼリフや、ピーターフォンダ主演の村上龍の映画は、違和感なく受け入れられるであろうか。
志村けんさんがお亡くなりになったのはレジ袋が有料になる前だったが、コンビニで聞かれたらなんと答えただろうか。
大丈夫だな。