見出し画像

心的ミューズ|「五線譜より始まる物語」 Vol.01

1.はしがき

 素直になることが簡単に出来るなら。思春期という名前の荒波を、どれほど簡単に乗り越えられるのだろうか。

 自分が「終わった」と思わない限り、青春は終わらない。死ぬまで、永遠に青春を生き続けることだって出来るんだ。青春は人の生きる源になる。

 だけど、時に青春は自分自身を傷つける。夢を見ること、恋をすること、自分と向き合うこと。対人関係で傷つくこともあるが、自分自身が自分を傷つけることだってある。自分と向き合うということは、過去の自分と戦うということだ。どんな悪人よりも、どんな怪獣よりも、過去の自分は強い。強くて、ずる賢い。そして、自分の中の自分は誰よりも饒舌だ。いつだって。

「あの時、こうしていれば...」
「自分なんて」
「でもお前なんかじゃ...」

 どうしても、このような負の感情に言い負かされてしまう。人前で泣くことは出来ないから、必然的に自分の部屋か寝室でこの作業を行うことになるが、これはとても辛い行為である。

 そんな時、わたしは音楽の力を借りる。○○がなければ、なんて言うのは些細な話かもしれないが、自分にとって音楽は欠かすことの出来ない「人生のミューズ」のようなものと言っていいだろう。

 わたしが内省に走る時は、ボブ・ディランやビートルズ、ピンク・フロイドといった洋楽を聴くことが必然的に多くなる。英語力の拙い自分は、洋楽を「メロディーを一番に楽しむ音楽」だと定義している。だから、わたしは雰囲気で音楽を聴く。こういう時は、特に。(音楽好きの皆さんには怒られるかもしれませんが・・・。)

 今だって、ボブ・ディランを聴いている。ちょうど「Blowin' in the Wind」がスピーカーから流れて来た。日本語は、あまりにも感情に寄り添いすぎる。逆に心の痛みを抉ってしまうのだ。

 だが、少し心が落ち着いたと感じた時からは、逆に普段から慣れ親しんでいる日本語の楽曲を聴いた方がいい。さっきは「感情に寄り添いすぎる」と書いたが、この場合は「感情に寄り添ってくれる」方が立ち直るための良い手助けになるからである。

 これは簡単なことだ。「I Love You」と言うよりは、「愛してる」とか「好きだ」と言った方が伝わりが良い。「You can do it!!」というよりも、「諦めるな」と言った方がより頑張ろうという気になる。

 言葉は劇薬だ。ちゃんと与え方を考えれば、心を上手くコントロールすることもより容易いものになっていく。

2.今回の一曲

 ここで、わたしが落ち込んでいる時から立ち直ろうとする時に、いつも聴いている楽曲をひとつ紹介しよう。それは、THE ALFEEの「Another Way」という楽曲である。

あの日あの場所にもう一度
もしも戻れるのならば
やり直したい過去が誰にもあるはず
人は後悔の涙を胸の奥に秘めながら
別の生き方を夢見るAnother Way

THE ALFEE「Another Way」より

 アルフィーの楽曲は、心に寄り添ってくれるものが多い。決して寄り添いすぎるというわけでもなく、寄り添わないわけでもない。ほどほどに寄り添ってくれる。「頑張れ!」や「諦めるな!」など強い言葉で背中を押してくれる楽曲もあるが、何処かでちゃんと手を握っていてくれる。そこが、わたしがこのアーティストを好きな一つの理由なのだと思う。

 この楽曲は、特にそうだと思う。ストリングスで派手に盛り上げたり、奇妙な音のシンセサイザーで目先を変えたりもしない。シンプルなバンドサウンドに、坂崎さんの優しいボーカルと、桜井さんと高見沢さんのコーラスが乗っている。

 逆にいえば、それだけなのだ。これを物足りないと感じる人もいるかもしれない。でも、わたしは好き。めーっちゃ好き。

 語彙力のない表現で申し訳ないが...まず、シンプルなバンドサウンドがあって、そこに「過去の自分を振り返り、未来に向かって今を前向きに生きようとする主人公」という、どんな時でも寄り添ってくれる歌詞が乗る。

 おそらく、これって、誰もが一度は抱く感情じゃないのかな。過去を悔んで、立ち止まってしまう。

「あの時、こうしていれば・・・」
「ああいう風に動いていれば、今こうなっていたのかもしれないのにな。」

 わたしも、高校生活の終わりが近くにつれて、自分と向き合うことが増えてきた。そんな時、特にこう思う。冗談じゃないと部活を辞めようとした中二の夏、全てを投げ出そうとした中三の夏、右も左もわからずに何かを動かそうとした高一の夏、アテもなく走り続けた高二の夏。そして現在。

 もし、何かの奇跡が起きて過去に戻れるとしても、未来を知っている自分が今より上手く行くかなんてわからない。もし上手くいっても、今歩んで来た道で巡り会えた人、出来事、カルチャー、未来を描いた地図。そして、何より、やりたいことを見つけた自分には、出逢えなかったかもしれない。

 そう考えると、今選んで来た道が一番正解だと思えるし、もし別の生き方が出来るとしても、人生をやり直せるとしても、自分はまったく同じ道を歩むと思う。

 普通、悩んでいる時に聴いている楽曲は、悩みが醒めてしまうと距離を置きたくなる。思い出してしまうから。思い出してしまうのが怖いから。

 でも、この曲はまた聴きたくなる。毎日でも、聴きたくなる。どんなときも、後悔は付きまとってくるものだから、その度にこの曲を聴いて、自分の散らかった感情を整理していく。これからも、数えきれないほどの出逢いがあるだろう。悩むことがあるだろう。そんな時、自分に寄り添ってくれる楽曲に出逢えたこと。そして、これまでめぐり逢ってきた全ての人々から学んだこと。全てに感謝して、夢を追いかけていきたい。

 今の自分は、本当に幸せ者だと思う。

3.あとがき

 人生のターニングポイントって、突然訪れる。今、こうしてここで文章を書いているのも、何かの偶然から始まったものだ。

 「偶然は必然だ」とかよく言われるが、わたしはそうとは思わない。偶然は偶然でしかない。だけど、偶然が重なり合うことによって必然が生まれる。自分はこう捉えている。

 わたしはペンを持つことで、自分を表現することがどんなことよりも好きだ。皆さんも、好きなことってあるはずだ。自分なりの「心的ミューズ」を見つけること。これが単に幸せになる秘訣だなんて口が裂けても言えないが、自分を少しは楽にしてくれる「相棒」にはなるはずだ。少なくとも、わたしにとっては。


※ 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。今回紹介した「Another Way」という楽曲は「Going My Way」というアルバムに収録されています。もし良ければ、手に取ってみてください。このエッセイでは、これからもこのように自分が出逢った楽曲たちを紹介していこうと思っています。もし良ければ、お付き合いくださいね。シェアやツイートなどもお願いいたします。それでは、おやすみなさい。良い夜を。

YUU_PSYCHEDELIC

最後までお読みいただき、ありがとうございました。 いただいたサポートは取材や創作活動に役立てていきますので、よろしくお願いいたします……!!