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【二十一枚目】影山ヒロノブ「光戦隊マスクマン / 愛のソルジャー」

 売野雅勇×井上大輔。

 「2億4000万の瞳 〜 エキゾチック・ジャパン」「め組のひと」などなど……数々の名作を手がけた“黄金コンビ”の作品を今回はご紹介しましょう。

 まさか、特撮作品でこんなに豪華な組み合わせが見られるなんて。わたしもディスコグラフィーを見て、最初は思わず『嘘でしょ?』と声を上げてしまいました。これは、やばいです。松本隆×筒美京平がいちばん有名なコンビですが、楽曲のインパクトでは負けてません。

 早速、参りましょう。

楽曲紹介

 “気!気!オーラパワー 鍛え上げろよ オーラパワー”

 凄まじい歌詞。オーラパワー全開。オーラパワーは宗教的なものではなく、気功と呼ばれる中国由来の健康法をモチーフにしたそうです。

 『光戦隊マスクマン』といえば、谷隼人さんが浮遊するシーンを想像する方が多い(実際インパクトは抜群)んですが、1980年代中期の戦隊シリーズの流れを忠実に受け継ぎ、次世代への種を蒔いたドラマ性の強い作品としても知られています。レッドマスク・タケルとイアル姫(美緒)の恋愛劇は物議を醸しました。(この作品、何をやってもオーラパワーの印象が強過ぎるんです……笑)

 それを象徴するかの如く、力強いオープニングテーマと、ロマンティックで爽やかなエンディングテーマという風に、戦隊のパブリックイメージと作品色を両立させる構成が取られています。

 オープニングの「光戦隊マスクマン」は非常に力強く、かつ軽やかな楽曲ですね。主旋律を食う勢いのブラスやエレクトリック・ドラムが聴き手を惹きつけ、バッキングのバンドがそれを支えるという構成。エレキやシンセも各所に入っていますが、あくまでもオブリガートに徹していて、そこまで前に出てはいません。また、この構成によって音に隙間が生まれ、影山ヒロノブさんのいちばん美味しい歌声が直で心に染み渡るという、影山ファンにとってはとても素晴らしい楽曲です!

 逆に、エンディングの「愛のソルジャー」は爽やかながらも非常にしっかりとしたブラスロック。導入からブラスの勢いが凄い。スペクトラムや爆風スランプでおなじみの、新田一郎さん的な気持ち良さがあります。ロマンティックかつ、情熱的。情緒的。サビのバックで鳴るブラス隊があまりにも気持ち良くて。そこから、カノンのような間奏、2番のAメロはシンセ中心の“引き”、またBメロ以降で叩き込むという怒涛の展開が印象的です。そして、何より売野さんの歌詞が非常に巧みですよね。特撮的な外連味と、情緒性。

 “もしもこの命差し出して 君の夢守れるなら 何も惜しくはないのさ”

 こんな歌詞、なかなか書けないですよ。『地球戦隊ファイブマン』のエンディングでも売野さんは同じようなニュアンスの歌詞を書いてますが、彼の戦隊ヒーロー像の一端が現れている気がします。

 秋元康さんがわかりやすいですが、80年代にブレイクした作詞家はもともと作詞の道を志したわけではない方が結構いますよね。売野さんも広告代理店のコピーライターから作詞の道に進まれたのですが、オープニングのサビのフレーズ(冒頭に載せました!)でもわかるように、覚えさせる、耳に残る言葉を書かせると絶品だと思います。尊敬……

 どちらかというと、歌詞のインパクトと浮遊する姿長官ばかりがネタにされがちなマスクマンですが、一回ちゃんと聴いてみてほしいです。それまでの戦隊とは打って変わった意欲作。本編も曽田博久さんと長石多可男さんのコンビが一番脂乗っている時期の作品でございます。濃密で、おもしろいです。

 是非、ご覧あれ……!!

 エッセイ『MR80’s』第21回
 坂岡 優

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