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毎日400字小説「夏休みのできごと」

 武藤カナタは大学一年生の夏休みを持て余していた。サークルは、どれに入ろうか迷っているうちに入りそびれてしまった。出会いを期待して応募したリゾート地でのアルバイトは、直前で締め切られてしまう。でも行けたところできっと何もなかっただろう。陰キャでオタクで顔も悪い、いろんな恨みをこじらせてSNSで攻撃するところまでいってしまった自分にはただの一人の友達すら、出来る気配がない。そうして、大学生活をエンジョイしてるって見栄を張って、実家に帰ることもできず、ぐずぐずと布団に丸まってスマホばかりいじっていると、突然、画面に警告メッセージが現れた。どうせ偽警告だろう。落ち着いて画面を処理しようとしたカナタの手が止まる。『地球の滅亡まであと〇秒。救えるのはあなただけです』そんな文にボタン、そしてカナタの写真、プロフィールまで載っているではないか。気持ち悪。カナタは削除ボタンを押した。一秒後、地球は滅亡した。

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