毎日400字小説「わたしのこども」
ときこさんは毎日毎日こどもを産んだ。だのにこどもには一度も会ったことがなく、なんだか昨日も産んだような気がするわねえとおもいながら、今日の分を産んだ。ときこさんは鶏だ。養鶏場で飼われている。かわいいかわいいわたしのこども。産んだときにはいとおしさでいっぱいで、だいじにだいじにおなかの下にかくすのだけれど、三歩歩けば忘れてしまう。でもあるひ、とびきりのを産んだ。お腹の痛みが尋常ではなく、がんばってひり出す時、涙が浮かんだ。このこはきっとなにかになるにちがいないとときこさんはおもって、だいじにだいじにかくした。けれどやっぱりこどもは回収されてしまう。おもいが強かったのか、ときこさんは翌日になっても翌々日になってもときどき、あの子はどうしたのかしらとかんがえていた。そのときこどもはマクドナルドに卸されていた。期間限定のてりたまバーガーになって、「てりたまマジうまい」と言われながら、食べられていた。