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natutubaki
毎日400字小説「未来の自分」
マンガなんかで未来の自分がやってきて、自分に向かってこうはなるななどのアドバイスするという話があるけれども、今三十年前に行けたらなんて言う? という話で盛り上がった。「その会社は辞めとけって。それだけだわ」と言うのは、新卒入社した会社のあまりのブラックさに心身ともに病んで、今も非正規でしか働けていない香である。葉子は「真人と結婚しとけ」と言った。ほとんどヒモ状態だった真人を三十歳の時に切り、婚活を始めたものの今だ結婚には至っていない。一方真人は友人に誘われて起業し、タワマン住まいだという。「知佳は?」と訊かれ、うーんと知佳は悩んだ。二人ほどに覆したい過去があるわけではなかった。夫は高給取りではないけれど家事に協力的ないい人だし、二人の子供も平凡ではあるがあと数年で独立する。幸せだといえば言えた。ただ物足りないのも事実だった。「歌手になれって言おうかな」結局どう生きても、満足はしないものなのだった。