毎日400字小説「別れる理由」
その日の彼女はここ数日の不機嫌が嘘みたいな明るい顔をして、料理もたくさんつまみ、僕の冗談にもお腹を抱えて笑ったので、生理が始まったな、なら今日はお泊りなしだなと、PMSの知識のある僕は思って、「飲み過ぎないほうがいいんじゃない?」なんて、体を気遣う素振りまで見せていたので、食事が終わり、そろそろ出ようかという段になって、不意に真面目な顔になった彼女が、「好きな人ができたの」と言い出すなんてことは、これっぽっちも思ってはいなかった。「わかってたと思うけど」このところの不機嫌はそのせいで、別れを決心したのですっきりしたのだという。聞いてないよという僕の声を、彼女は聞いていなかった。もしかして引き留めて欲しくてそんなことを言ってるんじゃないかって思って嫌だと言ってみたけれど、お願いと頭を下げられる。「いい思い出にしたいの」なんだよ勝手だな。僕は腹を立てて、グラスを投げつけた。怯えた彼女の顔に、むらっとした。