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毎日400字小説「休日」

 三連休の初日、津山こと子はいつもより早い朝六時半に起きると、簡単に身支度をして、引っ越したばかりのワンルームマンションを出た。在来線を三つ乗り換え目的地に着いたのは九時半だったので、朝ごはんを食べるため、目に付いた喫茶店に入ってガイドブックを広げた。こと子はその地で二時間半かけてハイキングコースを回り、駅から少し離れたところにある有名なそば屋で昼食をとり、駅前の商店街をぶらぶらと歩いた。低いと思っていた山はあんがい高くて見晴らしがよく、うっすらとかいた汗に風が心地よかった。おっかなびっくり吊り橋を渡ること子の横を、三歳ぐらいの女の子が飛び跳ねながら駆けて行った。おろしそばはそばの香りが高く、商店街で入った喫茶店で飲んだバニラアイスカフェの甘みは疲れた体に染みわたった。平気だ、と、うつらうつらしながら揺られた帰りの電車の中でこと子は思った。それが、五年付き合った彼氏と別れて初めての休日だった。

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