毎日400字小説「双子」

 双子の兄貴である耕太が実家に戻ってくると聞いた時、ザマーミロと、おれはひそかに思った。耕太とはずっと二人だったから、高三の時、耕太が一人で東京行きを決め、おれに内緒で専門学校に入学手続きをしていたことを聞いた時は裏切られたと思った。「だって、言ったらお前も来るって言うじゃん」この兄のおそろしいところは、両親にも内緒で、入学金や何やかやを全部お年玉の貯金でまかなったところだった。行きたいって言ったところでおれのお年玉はほぼゼロに近い。学校で入れ替わりドッキリをしかけたところ放課後になるまでバレなかったぐらい顔はそっくりだけど、性格は真逆だった。ああそうだ、だから兄は一人で東京へ行ったのだ。都会の生活を満喫する兄が羨ましく、そして妬ましかった。それから十年、二十八歳の兄が夢破れて帰ってくる。ダメだったのかよ、かっこわりって、笑ってやりたかった。だけど、気づいたらハグしていた。よく帰ってきたなって。

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