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oekakiakane
毎日400字小説「待ち合わせ」
スマホを手に、それとなく辺りに視線を巡らし、莉奈は何度目かの溜息をついた。来るんじゃなかった。三十分も前に送った着きましたのラインは既読になったきり動かず、目印にかぶっていくと言ったピンクのニット帽が、拷問のようだ。刺さる視線。浮かれてはしゃいでた昨日の自分を、呪い殺したくなる。
話が弾んで、会いたいと自分から言った。向こうもそう思ってくれて、天にも昇る気持ちだった。でもきっと陰から見て、タイプじゃないって帰ってしまったんだろう。容姿は関係ないですって、言っていたくせに。
ひし形の顔で、悪意のあるあだ名で呼ばれてた莉奈に、彼氏が出来たことは一度もない。たぶんもうブロックもされてるんだろう。
「ごめん」諦めて帰ろうとしたとき、声がした。顔を上げると花束があった。差し出す男は息を切らしている。「今日、誕生日ってさっき気づいて」ほっとしたのとうれしかったのとで、相手の顔は滲んでよく見えなかった。