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harunatelier
毎日400字小説「危険な」
友人の結婚式に夫婦で出席したら、新婦の友人として過去の不倫相手が来ていた。「えー、係長。どうして?」と言われ、ゆで卵を飲み込んだような顔になって、「どうしたの?」と妻に訝られた隆司だったが、「ほら昔、徳島の現場でさ……」妻も知っている話をして上司と部下であることを強調した。「あのときは大変お世話になりました」彼女も心得たもので、妻に向かって愛想よく頭を下げる。大丈夫、きっちり別れたのだ。隆司は自分に言い聞かせる。しかも悪くない別れ方だった。彼女のほうに新しい男が出来て、結婚するという話だった。「今日は旦那さんは?」思い出して訊いてみると意味ありげに見てきてから、「ダメになっちゃったんです」と目を伏せる。「係長が忘れられなくって」と言うので、心臓が飛び出たが、「なんちゃって」舌を出して、妻も笑った。が、「来月から、本社に戻ることになりました」別れ際、こっそり耳打ちされたので、隆司はその日は眠ることが出来なかった。