最終話 はなむけ
光がするりととけた。暗闇が覆う。
それは悼みであり、痛みであった。
けれどもあなたはあなたの意志で、すでに踏み出していた。あなたが思う、あなたにとっての前へ。
あなたはおそれながらも歩みを止めないだろう。あなたは知っているから。
それは水がめぐるように。ただひとつの命。たからもの。
歩き続けるあなたの頬に、やがて苹果に似た色の光が寄り添う。
光が満ちていく。洗われた、まっしろな光。響く音は、さざなみの音。
仄青い花びらが、海風に舞っていった。
あなたの表情は見えない。
ひとひら、ひとひら、あなたの手から、おくられていく。
やがて、あなたのてのひらはからっぽになった。
――さあ、いずれまた、逢いましょう。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?