05 秋灯
爪先から冷えていく、そんな夜でした。
窓の外では、あかがね色の月が傾いていました。ベッドに入って本を読んでいると、風が窓ガラスをたたく音が聞こえたんです。
そうです、古今和歌集にもありますね。
秋来ぬと目にはさやかに見えねども 風の音にぞおどろかれぬる
窓辺を見たときには、すでに宝箱は戻ってきていました。いつかの日、いらなくなった、あの宝箱です。
そっと蓋を開けると、箱の中には一本、仄青い水の鍵が入っていました。
ああ、やっぱりあの手紙はとどいていたんだ、そして今、お返事がきたんだ。そう、思いました。