12 坂道
獣医さんは、腎臓病になるのは家猫の宿命だと言いました。
でも、病気なのだからきっと予兆があったはずで、それに気づけなかった落ち度があると思いました。それでももう、どんなに後悔しても、壊れた臓器の機能は回復しません。
自転車の前かごにケージをのせて、坂道をとぼとぼと下っていきました。自分以外の命って、こういうことなんだな、と思いました。
どうにもならないんです。
どうすることもできない。
下り坂の途中で、金木犀が咲いているのが見えました。そのときに決めたんです。
これからは毎日、あの子に「大好き」と声に出して言おう、と。