06 どんぐり
ふんふんと鼻を近づけてみる。嗅いだことのない匂いがして、ちょんと前脚でさわってみた。
まるまるとした形をしているのに、あまり転がらなかった。残念。
ちょっと強めにパンチしてみる。ころん、と一回転しただけで、その後はちっとも動かなかった。
仕方がないので、ふて寝する。ふかふかの落ち葉の上にごろりと横になれば、空から赤い葉と黄色い葉が降ってきた。
いつもどおり脱走して、ぬかりなく駆け上がって、飽きたので遠出をしてみたら、知らないものばかりだった。
ひげが風にそよいで、心地いい。
なんとなく、この赤い葉も、さっきの丸いのも、あの子が好きなもののような気がした。