”自分”を知って、自分らしい働き方・生き方にギアチェンジしませんか〜会社の仕組みも変わり始めています!“コミュニティカンパニー”という新しい選択肢
ここ数年で働き方の変化は加速しています。会社員かフリーランスかという2択だけではなく、会社員でも副業制度が始まるなど仕事との関わり方も多様になってきました。会社との関わり方だけではなく、そもそも会社という組織自体も多様化してきているのが今、そしてこれからの時代。「コミュニティーカンパニー」と呼ばれる新しい会社のかたちへ舵を切ったYou be You株式会社(以下、ユービーユー)の代表・井尾佐和子さんに、コミュニティカンパニーについてお話を伺い、自分らしい働き方を見つけるヒントをもらいます。
コミュニティカンパニーという新しい会社のかたち
そもそもコミュニティカンパニーとは
井尾さんの考えるコミュニティカンパニーとは、コミュニティを限りなく株式会社の仕組みで実現していく法人スタイル。
「前提として、ユービーユーが運営するコミュニティ“アトリア”には、“1人1人が本来の私を生きる“という理念があります。その理念を実現した人々が集まったコミュニティを”法人”にしたかったんです」
コミュニティだけではビジネスをしにくい。法人だけでは営利目的になりすぎる。コミュニティとビジネスの2つの要素が統合されているのが、井尾さんが持つコミュニティーカンパニーのイメージだ。
「法人の部分は使いたければ使うというスタイルです。あくまでもコミュニティが最前線で、法人はコミュニティを支えるインフラ。人間に例えると、コミュニティが外側の肉体で、法人が肉体の内側にある心臓とか神経系という感じでしょうか」
コミュニティカンパニー化に至った理由
ユービーユーは元々コミュニティの要素が強い会社だったが、これまで構造上は“一般的な”株式会社だった。そこから、筆頭株主がいない“誰の支配下にもない”会社に法的にも変更したのが、2023年7月末。
“会社は誰のために存在するのか”という問いを立てると、一般的な株式会社は“株主のため”になる。それを“自分たちのため”に、つまり、自分たちで民主的に運営していく会社にしたかった。
「コミュニティであるアトリアには、“自分たちが満たされていることが結果、持続可能な社会につながっていく”という考え方があります。1人1人の幸せと、法人のハッピーが重なるというスタイル、その2つがセットになっているのがコミュニティカンパニーだと考えています」
今の時代だからできる組織のかたち
井尾さんは、コミュニティーカンパニーには“ガバナンス”という発想がないという。
ガバナンスとは、企業や組織を健全に運営するために管理または監視すること、を意味する表現だ。
「組織が単なる縦割りではなくグラデーション状に続いているという構造が、ユービーユーと一般的な会社との違いです。そして、そのグラデーションは組織構造だけではなく、関わり方にも存在しています。働く人の組織への関わり方が濃くなったり薄くなったりするタイミングがある、関わり方が変わっていくのも当たり前、と考えています」
また、情報の透明化も意識しているという。「どこまで情報を開示するか、どこまでをやってもらうか、という線引きはありつつも、経営者以外の立場で関わるメンバーにも権限を委任するなど、決まりきったルールをつくらず有機物のように会社が動き続けているイメージです」
こうしたコミュニティカンパニーは、DX化(情報クラウド化)によって実現している。「もしDX化していなければ、ユービーユーのオフィス機能がある東京の参宮橋(さんぐうばし)に来なければ情報が見られない。そんな状況だったらできないことだらけです」
コミュニティカンパニーは、組織に関わる誰もが、いつでも、どこからでも、フラットに情報にアクセスできる、DX化が進んだ“今”の時代だからできるかたちだ。
一般的な会社が全てじゃないというメッセージ
井尾さんは、就業規則に違和感を持ったことからコミュニティカンパニー化をスタートさせた。なぜならその内容が、機械化が進み生産性を上げることを優先させる内容で、そこに行き過ぎた合理性と危うさを感じたからだ。「そもそも会社を運営していくことの前に本来大事にされるべきは、働く人一人ひとりの幸せだと考えています。社会を変えるためにやっている訳ではないけれど、社会が変わることも大事だと思っています」一人ひとりのいのちが大事にされるという、よく考えたら当たり前のことをやっていく。その結果として、社会が変わるということをコミュニティカンパニー化で目指している。
「合理性をベースにしないかたちでも、会社を運営できますよ?と問いかけていきたい。一人ひとり自分が幸せであり、かつ会社の運営ができる理念を体現していくことがメッセージになると考えています」
コミュニティカンパニー化の難しさとこれから目指すこと
ユービーユーではコミュニティカンパニー化していく過程を“みんなの会社化”という呼び方で取り組んできた。その過程で、会社で考える「大事にしたいこと」をそのままにしつつ、法律に当てはめていくことが難しかったという。既存のものではない存在を既存の法律にフィットさせていくこと、擦り合わせをしていくことが苦労したところだ。
また、自分たちとは異なる世界観の人へ活動を伝えることの難しさも感じているという。
「“メリットは何ですか?”という質問をするような、“取引の世界”にいる世界の人との話し合いはとても大変です。でもコミュニティカンパニーの輪を広げようとすると、そういう人たちとも出会う。その中で単なる”取引“だけではない世界があることを伝えていくことが私の仕事だと思っています。また、コミュニティカンパニーという在り方がもっと広まっていくように、構築支援もしていきたいと考えています」
自分らしく働く、生きるということ
まずは“自分”を学ぶことから
どう働くかを考えるときに表層的に悩む人が多い。けれど、働くとはつまり、自分はどうやって生きたいかを考えること。ここを明らかにしなければ、仕事を変えても根本的な解決にはならない。自分の根っこは何か、“自分”を突き詰めていくことが大事、という井尾さん。
「その上で、自分の中で分断が起きないようにすることが自然な在り方ではないでしょうか。会社での顔、家族の前での顔、友だちの前での顔、SNSでの顔が違ったりしていると、辛くなったりする。また、自分の力が分散されてしまうようにも感じます。TPOに合わせることは大事ですが、切り分けないことが自然だと思っています。自分を“ダダ漏れ”にして生きていけると思っているんです」
自分を思い込まないこと
「自分らしさってなんだろう?と迷ったときには、自分以外の人に聞いてみるのがおすすめです。自分がこういう人だと考えている自分が、独りよがりでトンチンカンになっている人が多い気がします(笑)。自分の輪郭というか、他人との境界線を自覚したり意識するプロセスは大事ですが、“私はこういう人だ”という考えを握りしめすぎたり、その思いが強すぎるままだと、他の人と共生することができなくなる」
自分らしさと社会から求められることの一致が大事という井尾さんご自身も、求められて動くことと、自分のしたいこと、内外のバランスを意識している。
1人じゃないからできること
井尾さんは今、コミュニティカンパニーで働くことの大切さを実感しているという。
「体調や家族の事情で、仕事がままならないときもあります。気持ちが揺らいで仕事にムラができるはどうしてもあるけれど、支えあったり、ときにはツンと押してみたりしながらお互い転ばないようにしています。コミュニティカンパニーというかたちだからこそ、働くみんなの“よりしろ”になれると感じています」また、ユービーユーでは、“型にはまりにいかない”ということも大切にしている。
例えば雇用契約などの条件からではなく、関わる人が会社にコミットできることは何かを先に考える。今ある型にはめるのではなく、まずは枠のない中で試してみる。
「わかりやすいルールをつくったり、綺麗にまとめたりしても、“その人”によってアトリアに求めることが違えば、たとえつくったとしても壊れてしまうというか。100人100通りだからその人、そのときに応じて枠が変わっていくイメージです。また、例えばやってみた上で機能していないことがあったら、それを見つけた誰かが声をあげ、みんなで話し合ってやり方を変えてアトリアという有機体を巡らせるというスタイルを大事にしています」
みんな違うからこそ、自ら働き方を選ぶというお誘い
まずは、コミュニティカンパニーという選択肢があること、自分に合う働き方を選べることを知ってほしい、という井尾さん。
「今までの“みんな一緒”だった社会から、“みんな違う”社会に慣れていくのがこれからの時代に大切なことかもしれません。たとえばユービーユーの“型にはまりにいかない”というスタイルのように。コミュニティカンパニーというかたちの会社が増えて会社の“中身”が変わっていけば、法律も変わっていって、そして社会も変わっていくと考えています。まずは、自分の幸せから問い直すことから始めてもらいたいです」
井尾さん自身のこれからの働き方
ご自身が大事にしているのは、「目の前のことをやり続けること」、その中で起こってくる「想定外のことを楽しむこと」だという井尾さん。そんな井尾さんは、これからは自身の会社を飛び出していろんな組織に入っていっていきたいという。
「役割や肩書きにとらわれないで働いていきたいです。どこの会社の人かすらわからなくなるような働き方がしたいと思っています。海外を含めた拠点をつくることも考えていますが、広げていく中でも決して独りよがりにならないように。求められて動くことで、社会を循環させていきたいと思っています」
聞き手・書き手=オオウチユウ
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