雪渡り
友人のzenは、奥さんのeiとともに錦秋湖畔の借家に暮らしている。2階の窓から一望できる錦秋湖には人工物が映らないので、ただこの家一軒がほとりにあるかのような錯覚を覚える。
雪で覆われた景色は遠近感と高低差を奪い、スキー板を履けばそのまま向こうの山麓まで、直滑降でたどり着けそうだ。
朝もう一度訪れると、太陽をまばゆく反射していた。
細めた目をよく凝らすと、狐の雪渡りした跡が描かれていた。
堅雪かんこ、凍み雪しんこ。
狐の子ぁ、嫁ほしいほしい。
(『雪渡り』宮沢賢治)
物語がはじまる予感に西和賀は満ちている。