上坂すみれ「ネオ東京唱歌」PVのモチーフっぽいものカンタン解説
2020年1月発売予定の上坂すみれNewアルバム「NEO PROPAGANDA」に収録される「ネオ東京唱歌」のPVが公開されました。
「ネオ東京唱歌」PV 【Youtubeへのリンク】
https://youtu.be/2zZKWQU8F9M
レトロな世界観や上坂さんの扮装(男装には多くの人が眼を奪われたのでは?)、VFXによる演出、歌詞にも多くの特徴があり、大変奥深いものになっています。
また、本作にはモチーフにしたと思われる作品や人物などがあります。この魅力的なPVをより楽しんだり、これを通じてご自身の興味関心を少しでも広げていただければと思います。
1.この曲の基本情報
「ネオ東京唱歌」
作詞・作曲:志磨遼平 編曲:長谷川智樹
2020.01.22発売予定 上坂すみれ4th album「NEO PROPAGANDA」に収録。
作詞・作曲の志磨遼平氏は現在、「ドレスコーズ」という音楽ソロプロジェクトを展開するだけでなく、多くのアーティストへの楽曲提供を行っている人物です。
この曲のテーマには「偽・東京五輪音頭」というものが掲げられており、2020年開催の東京オリンピックへのアンチテーゼ的要素も含まれています。
2.PVに関するモチーフ・小ネタっぽいまとめ
a.「東京五輪音頭」
作詞:宮田隆 作曲:古賀政男
NHK大河ドラマ「いだてん」を観ていた方々にはもう御存知とは思いますが、この曲は1964年開催の夏季東京オリンピックの際に作られた曲で、昭和を代表する浪曲・歌謡曲の歌い手三波春夫の代表曲でもあります。(他にも橋幸夫や三橋美智也、坂本九らも歌っていたようです。)
三波春夫といえば「世界の国からこんにちは」の方が有名かもしれませんが、俵星玄蕃の歌も間違いなく名曲で忠臣蔵の歴史を語る上では書かせないとは思うのですが…
それはさておいて、56年ぶりの開催となる東京オリンピックは国立競技場問題からマラソンルートのトラブルまで問題続きで反対の声も大きいところであります。「偽・東京五輪音頭」というアンチテーゼ、労働者を全面に押し出すイメージは上坂すみれらしさ全開という印象があります。
また、「ネオ東京唱歌」の歌詞には〈顔と顔〉というフレーズは言うに及ばず、〈西の国から東の国〉、〈トントントン〉、〈若い花〉など「東京五輪音頭」を想起させるワードがたくさん出てきます。
なお、三波春夫「東京五輪音頭」はCDやAmazon MusicやSpotifyなどの配信サイトなどでも聴くことができます。
https://open.spotify.com/album/4Tz5L00m0YXV8bmDASwq1u
b.「メトロポリス」
こちらは曲というよりPV全体のイメージが関連付けられているような気がします。
1928年公開のドイツ無声映画の傑作で、SF映画の金字塔の一つであると言われています。監督はフリッツ・ラング、脚本は妻であった、テア・フォン・ハルボウとの共同執筆です。(小説版はテア・フォン・ハルボウ単独名義)
簡単にあらすじを説明しますと
巨大な摩天楼がそびえる科学都市「メトロポリス」は栄華極める上層階に住まう学識特権階級と下層でそれを支える労働者階級とに分かれていました。
支配者フレーダーセンの息子であるフレーダーはある日、偶然謎の美女に心を奪われました。謎の美女を探し、下層に迷い込んだフレーダーは労働者の過酷な環境に心を痛め、父親に直訴します。しかし、父親は耳を貸そうともせず、立ち去ってしまいます。再び地下に戻ったフレーダーはついに労働者を励ます謎の美女「マリア」と出会い、マリアが唱える特権階級と労働者階級の融和を模索し始めます。一方そのころ、労働者階級の反逆に感づいたフレーダーセンはある計画を実行に移そうとしていました。
簡単な粗筋で既にお分かりかと思いますが、労働者階級が支える巨大都市、「マリア」という名前、労働者を励ます美女など共通点が沢山あるかと思います。
資本主義・特権階級と共産主義・労働者階級の対立というテーマ、このPVでは人工知能と労働者の対立になっていますが構図としては意図的にオマージュしているのではないかと思います。
なお、作中に登場する労働者もスキンヘッドではありませんが、丸刈りであることが多いです。これもPVに登場する労働者のモチーフとなっていると思われます。
この作品はパブリック・ドメインとなっていますので、様々なサイトで視聴することが出来ます。
https://www.youtube.com/watch?v=-I9FD21k7Cs&t=3168s
c.「帝都物語」
この作品は荒俣宏の大型SF浪漫小説ですが、PVに登場する「加藤涅男」という人物のモチーフになっているのではないかと思います。「帝都物語」の中心人物といえば旧日本軍の出で立ちと軍刀、超人的な魔術の使い手として作中で暗躍する「加藤保憲」です。すみぺ扮する「加藤涅男」はあくまでバンカラ風のスタイルですが、「加藤」という苗字や軍刀の所持など共通点を多く見いだすことができます。
d.「1984年」
ジョージ・オーウェルのディストピア小説である「1984年」には「ビッグ・ブラザー」という人物が登場します。オセアニアという架空の国とその国民を支配する全知全能・絶対的な権力者として君臨する人物です。PVに登場する「ビッグ・マザー・マリア」は人工知能として都市全体を支配しているという設定なので、まさしくピッタリであると言えるのではないでしょうか?
また作中の「Big Brother is watching you」という文言は作品を代表するほどとても有名です。
少し前に両国国技館で行われた上坂すみれさんのライブ「上坂すみれのひとり相撲2016 サイケデリック巡業」で「sumipe is watching you」と書かれたTシャツが販売されていましたが、この辺りも上坂すみれワールド全開の要素であると感じます。
私が見つけられたのはこれぐらいでしたが、博識な皆様方におかれましては他にも色々なモチーフを見つけられたかもしれません。その他至らない点がありましたらご教授頂けますと幸いに存じます。
これを機に上坂すみれさんや映画、小説などに興味関心を持っていただけますと嬉しく思います。
最後までお読みいただきましてありがとうございました。
〈紹介した作品等の情報〉
フリッツ・ラング「メトロポリス」1927年 https://www.youtube.com/watch?v=-I9FD21k7Cs
テア・フォン・ハルボウ著、酒寄進一訳「新訳メトロポリス」中央公論新社
ジョージ・オーウェル著、高橋和久訳「一九八四年(新訳)」早川書房
荒俣宏「帝都物語」角川書店
「東京五輪音頭」
〈参考資料・webサイト等〉
荒俣宏「帝都物語」角川書店
ジョージ・オーウェル著、高橋和久訳「一九八四年(新訳)」早川書房
フリッツ・ラング、ピーター・ボグダノヴィチ著、井上正昭訳「映画監督に著作権はない」筑摩書房
東京五輪音頭 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E4%BA%94%E8%BC%AA%E9%9F%B3%E9%A0%AD
上坂すみれ 4thアルバム「NEO PROPAGANDA」特設サイト
http://king-cr.jp/uesakasumire_neo_propaganda/
〈画像の引用元〉
・アニメイトタイムズ「声優・上坂すみれさんのニューアルバム「NEO PROPAGANDA」より、リード曲「ネオ東京唱歌」のMV公開! 少女と学生の恋を描く歌劇で、一人三役に挑戦」2020年1月7日時点参照 https://www.animatetimes.com/news/details.php?id=1578108414
・メトロポリス(1927年の映画)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A1%E3%83%88%E3%83%AD%E3%83%9D%E3%83%AA%E3%82%B9_(1927%E5%B9%B4%E3%81%AE%E6%98%A0%E7%94%BB)#%E6%92%AE%E5%BD%B1
・ビッグ・ブラザー https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%93%E3%83%83%E3%82%B0%E3%83%BB%E3%83%96%E3%83%A9%E3%82%B6%E3%83%BC
Frederic Guimont ; Original uploader was ChemicalBit at it.wikipedia - 1984comic.com (former Art Libre licence stated here) ; Transferred from it.wikipedia, FAL, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=10786938による
・東京五輪音頭
https://www.amazon.co.jp/%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E4%BA%94%E8%BC%AA%E9%9F%B3%E9%A0%AD-%E4%B8%89%E6%B3%A2%E6%98%A5%E5%A4%AB/dp/B01MTRXBSW/ref=sr_1_2?__mk_ja_JP=%E3%82%AB%E3%82%BF%E3%82%AB%E3%83%8A&keywords=%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E4%BA%94%E8%BC%AA%E9%9F%B3%E9%A0%AD&qid=1578334357&s=books&sr=1-2-catcorr
・シネマトゥデイ「今は亡き天才漫画家が「世紀末のおもちゃ箱」と批評!原作者が伝説のカルト映画『帝都物語』の裏話を明かす」
https://www.cinematoday.jp/news/N0073133
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