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第9回BBC読書会 『百年の孤独』ガルシア=マルケス
先週の土曜日、11月30日に実施した『百年の孤独』読書会のレポートをお届けします。
集まったのは店主含めて6名。ハードルが高そうな本なのであまり人が集まらないかなと心配しておりましたが、やはり注目度が高い本ということでちょうどいい規模で実施することができました。
はじめて読む人もいれば再読の人、30年くらい積読していた人、一度読んで挫折した人、小説をほとんど読まない人…という参加メンバーによる読書会となりました。
全体通した感想
全体通しての感想としては以下のような意見がきかれました。
「ダレるところもあるがツッコミどころが多く気になって読んだ」
「先にあとに起こることが提示されてあとから説明されるのが鳥肌モノ」「印象的なシーンが多い」
「マジックリアリズムというジャンルを知らずにこれを読んで知った。マジックリアリズムのなんたるかがわかった気がする」
「アウレリャノとかアルカディオがいっぱい出てきて読むだけで精一杯だったが、メメが出てきたあたりから章が短くなって読みやすくなった」
「ある一人に注目したかと思うとちょっとずれて違う人の話になる。どうなんだろう?と思いながら読んでいくとズバッと答えを出してくれるのが心地よかった」
「最初読みにくかったが、だんだんおもしろくなっていった。観念的に理屈をこねくりまわすみたいなことがなくそれが逆に読み慣れなかった」
描写の素晴らしさ
何名かの共通した意見で、描写が素晴らしいという意見がきかれました。
「描写が秀逸で引き込まれた」「アウレリャノ・ブエンディア大佐の死に際の描写がすごくいい」「空気とか風の流れといった自然の描写がすばらしい」
ちょっとよくわからないな?と思ってもこの生き生きとした描写によって読み通せたという人も多かったのではないでしょうか。
よくわからなかったところ
『百年の孤独』の中には最後まで読んでもはっきりと明かされない謎がいくつも出てきます。その謎についてもみんなで話し合いました。
・ホセ・アルカディオの死の謎
暗殺?と思ったら訳者のあとがきで自殺と書かれていた。動機など一切不明でその後凶器が発見されなかったと書かれていることも謎を深めている。頭の右側を撃ち抜かれたことが自殺の根拠か。
・レメディオスは死んだの?
印象に残ったという人が多いであろうレメディオスの昇天シーン。
文字通り読んでいいのか、あるいは若者たちに強姦されたことの暗喩なのか、など議論になりました。尋常ならない美貌のレメディオス、この世ならぬなにかに連れて行かれたのでは、と書かれている通りマジカルな出来事として読んだりいろいろな解釈ができそうでした。
・遠方の医者
フェルナンダが文通をしていた遠方の医者とはなんだったのか。これについては話し合ってもよくわかりませんでした…。
・ぶたのしっぽ
ウルスラが恐れ、最後のアウレリャノに生えていた豚の尻尾。これについては穢らわしいものの象徴、近親相姦をタブーとするための迷信などの意見がありました。
また、これについて書かれた論文があることも見つけてもらいました。
http://ajel-jalas.jp/nenpou/back_number/nenpou040/pdf/13_%E5%B1%B1%E5%86%85%E8%AB%96%E6%96%87.pdf
他にもタイトルの「孤独」は何を指していたのだろうという疑問があがりました。
これについては英語版に挑戦したという人が「ひとり」という言葉を「soli」と英語で訳していたり「soli」「solo」という単語が頻出するという指摘をされました。日本語で「孤独」といった時の寂しい感じというよりはひとりでいることや独立しているニュアンスなのではとの意見。キャラクター一人ひとりに他の人が踏み込めない心の領域があって独立している感じの意味合いなのではというまとめをしてくださり、疑問を呈した人も納得されていました。
他にも
・バナナや黄色い花、黄色い列車、黄色い蛾など黄色いものが出てくると不吉なことが起こる。黄色はこの世界の悪い予兆
・私生児のアウレリャノの友達4人組のうちの一人、ガブリエルは作者自身のことではないか(祖父がヘリネルド・マルケス、恋人の名前がメルセデス、フランスに旅立つ)
・ウルスラとピラル・テルネラという二人の「お母さん」が軸になっている
・筒井康隆の「ヒノマル酒場」は百年の孤独から影響を受けていそう
・汽車に乗っていた死体はなんだったの?
などなどいくつものトピックについて考察・疑問が展開されました。
キャラクターや個々のエピソードについて話しているとつい盛り上がって時間をオーバーする勢いで盛り上がりました。
難しい、とっつきにくいというイメージの作品でここまでいろいろな話ができるというのはすごく貴重なことだなと感じました。
また、終わったあとに「もっと話したかった」「また読みたくなりました」といった声もあり、うれしくなりました!
ご参加のみなさま、ありがとうございました。
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次回読書会の課題本についても決定しました。
小説を読む読書会はまた2ヶ月後です。
2025年1月11日(土)19時〜
課題本「やさしい猫」(中島京子)
来月の読書会はこちらです。
課題本:『目の見えない白鳥さんとアートを見にいく』(川内有緒)
日時:12/21(土)
※定員充足。参加希望の場合はキャンセル待ちとなります。
参加申し込みはこちらからどうぞ。
また、読書会延長戦の掲示板もあります。語り足りないという人、読んだけど参加できなかった人などはこちらから書き込みどうぞ。過去の課題本についての書き込みも歓迎です。
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